院試塾ブログ
インターネット大学院予備校代表・畑中泰道のブログ

12 January

工業英検の参考書がよくできていると感じる点

 思うところがいろいろあって,工業英検関連の参考書をいくつか読んでいるのだが,英文読解に関する説明がすぐれている点がいくつもあって,なかなかおもしろい。
 たとえば,『工業英検2級クリア』のpp.40-41には,「結果を表す分詞構文」として,

という形が紹介してあり,

という例が挙がっている。実はこの手の分詞構文は,分詞構文の意味上の主語が主節の主語ではなく主節全体なのだが,大学受験の参考書などではほとんど取り上げられていない。しかし,実際に英文を読んでいると,たしかによく出くわすものである。そして,この参考書でも,「主文全体を先行詞として,関係代名詞whichの非限定用法を使用した場合と同一」(p.41)という説明があり,そのように書き換えた例文まであわせて挙げている。
 また,be known as 〜が「〜と呼ばれている」という意味になる点について,これまでにいろいろ書いてきたが,これについて,『工業英検3級対策』(p.112)は「〜として知られている」と対等に意味を挙げている。
 さらに,名詞化と無生物主語構文の扱いについて,同じ『工業英検3級対策』(pp.40-41)にコンパクトではあるがそれなりに踏み込んだ説明があり,特にp.40では,動詞を名詞化した場合,もとの動詞が自動詞であるか他動詞であるかによってof句の解釈が異なる点をとりあげている。
 検定試験の目標が目標であるからかもしれないが,「こうすれば点数がとれる」ではなく,「こうすれば英語がきちんとわかるようになる」という姿勢が貫かれているように感じて,とても好感を持っている。理工系の大学院入試英語の準備にも十分役立つだろう。
19:48:32 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

11 January

科学技術英語と工業英検

 資格試験の合格だけを目指して勉強することに,ぼくは基本的に反対だ。しかし,資格試験を目標の1つとすることは,勉強の進み具合を自ら知る上で有効な手段でもある。つまり,究極の目標は資格試験以外にところにきちんと定めつつ,目標管理のための資格試験を活用する,とでも言えばよいだろうか。
 ぼく自身にとって,英語学習歴の前半の目標管理に使っていたのはいわゆる「英検」で,大学2年で1級に合格して資格試験からは「卒業」した。しかし,今年度から神奈川大学で科学技術英語を教えるようになって,やはり授業の目標の1つとしている「工業英検」(3級)の問題を見るようになり,英語の科学論文や文献が読めるという最終目標との関係についても考えるようになった。
 資格試験である以上,「いかにも」という問題があるのはいたしかたない。工業英検3級で言うと,大問1(英語→日本語),2(日本語→英語)の単語問題などは,これだけの「対策」をしようとすると,実に無味乾燥になってしまうだろう。これはなかなか授業という枠組みでは扱いようがないので,日々の学習で語彙力を増強していくように学生を誘導するしかない。
 一方で,大問6の読解問題は,科学技術英語の基礎力をつける上で大いに役立つと感じられる問題が多い。誤読の多いポイントをうまく突いた問題なのだ。2011年11月実施の第89回問題を見てみよう。

Why does the moon look the same size as the sun in the sky? This coincidence, which makes the spectacle of total eclipse possible, occurs because the sun, although 400 times bigger than the moon, is also 400 times further away.

下線部は意味を4つの選択肢から選ぶ設問になっているが,これがなかなか興味深い。

  1. 皆既日食観測用のめがね

  2. 完全なだ円形のめがね

  3. 日食観測機の感度

  4. 目を見はるような皆既日食の光景


正解は4なのだが,文脈を考えないと,1あたりに引っかかってしまいそうだ。また,「めがね」という意味ではglassesと同じく複数形になる,という知識があると正解にたどりつきやすい。いわゆる「対策」ではなく,しっかりした英語の知識が必要となる。
 もう1つ,2011年7月実施の第88回の問題も見てみよう。

Methematically, density is defined as mass divided by volume. The formula is always the same. Let us take a non-rectangular solid as an example. First, find the mass using a balance. Then, find the volume by submerging the solid in some water in a measuring cylinder.

これも下線部は4つの選択肢から訳を選ぶもので,正解は「まず,天秤を使って質量を測ってください」というもので,もちろん,usingが分詞構文であるといったように英文解釈的に考えれば正解にはたどり着けるが,find the mass using ...と直後のfind the volume by ...との平行性に着目し,かつ,質量を測るにはどうすればよいかを考えることができれば,意味を理解しやすくなるはずだ。
 そして,このような訓練を重ねていくことで,科学技術に関する英文が正確に読めるようになるのではなかろうか。
21:29:04 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

28 December

否定の作用域とbecause節の解釈

 以前「because節の『係りかた』」という記事で,I don't respect him because he is rich.のようにnot ... because 〜という形の文には2とおりの解釈があることを紹介した。その記事でも述べたが,これはnotの否定が及ぶ範囲(専門用語で言う「作用域」)にbecause節が含まれるかどうかによることも説明した。今回は,そのことが形式からより明確にわかる例を紹介しよう。

A country like Indonesia is still so poor that progress can be measured in terms of how much the average person gets to eat; since 1970, per capita intake has risen from less than 2,100 to more than 2,800 calories a day. A shocking one-third of young children are still malnourished―but in 1975, the fraction was more than half. Similar improvements can be seen throughout the Pacific Rim, and even in places like Bangladesh. These improvements have not taken place because well-meaning people in the West have done anything to help―foreign aid, never large, has lately shrunk to virtually nothing. Nor is it the result of the benign policies of national governments, which are as callous and corrupt as ever. It is the indirect and unintended result of the actions of soulless multinationals and rapacious local entrepreneurs, whose only concern was to take advantage of the profit opportunities offered by cheap labor. (Paul Krugman, The Accidental Theorist, pp.83-4)

下線部の構造は,... not [taken place because ...]で,「西欧の善意の人々が何かをしたから生じたのではない」という解釈になる。notが否定しているのはtaken placeだけではなく,because節までが否定の作用域に含まれているのだ。
 もちろん,notの否定がbecause節に及ばない解釈はおかしなものとなる。しかし,notがbecause節まで含めて否定していると解釈する構造上の根拠がある。それは,強調した部分がsomethingではなくanythingになっていることだ。anythingが否定や疑問の文脈では「何か,何も」という意味になり,肯定の文脈では「何でも」という意味になることは,英文法の基本知識だろう。ところが,この文のanythingを「何でも」と解釈すると明らかにおかしい。このanythingが「何か」と解釈されるのは,notの否定がここまで及んでいることの証拠だと言ってよい。
 notの否定がbecause節まで及んでいて「[〜だから…した]のではない」という意味になることは,後続文脈からも裏づけられる。問題の文の後には,Nor is it the result of ...と因果関係を否定する内容の文がもう1つ続き(しかもNorでつながっている),その先にはIt is the indirect and unintended result of ...と,今度は因果関係を肯定する内容の文が続いている。この流れから考えて,問題の文も因果関係を否定していると考えるのが妥当だ。
 なお,このanythingのような要素を専門用語では「否定極性項目」と呼ぶ。興味のある人は,英文法の専門書や専門辞典に当たっておくことをお勧めしたい。
18:40:04 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

24 November

pathの意味と語感

 ずいぶん前(2005年1月5日)に「語を概念で理解する―pathの場合」という記事を書いた。この記事で書いたのと同じように理解すべきpathの例に出会ったので,紹介して簡単に解説しておきたい(図解については上の記事を参照のこと)。

この文のpathは『ロングマン英和辞典』では2.の「前方,前,行く手」,あるいは3.の「(移動する)進路,前方,軌道」とされている意味である(上の例文に含まれるin sth's/sb's pathは3の語義に関連して記述されている)。LDOCE5でも語義の立てかたは同じで,2.がthe space ahead of you as you move along,3.がthe direction or line along which something or someone is movingとなっている。
 『ロングマン英和辞典』の3.の例文を見ると,in sth's/sb's pathという連語関係に関連して,The tornado destroyed everything in its path.「竜巻はその進路にあるあらゆるものを破壊した」となっている。また,この語義のpathを含む連語関係として他にinto the path of sthがあり,その例文はShe walked into the path of an oncoming vehicle.「彼女はやってくる車の前に進み出た」となっている。これは「語を概念で理解する―pathの場合」で紹介したものにきわめて近い。
 なお,最初の例文のin its pathのitsはnuclear radiationを承けている。この前置詞句がelectronsを修飾する形容詞句として機能している点も確認しておきたい。
11:02:20 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

26 October

「つなぐ」のは接続詞だけではない

 howeverやthereforeの品詞は?と問われて,「接続詞」だと答える人は少なくないはずである。しかし,辞書を引いてみればわかるとおり,これらは副詞であって,接続詞ではない。簡単に,「AだがB」(ただし,A,Bはそれぞれ節)という場合を考えてみよう。等位接続詞のbutを使うと:

の2つの形が可能である(後者の形を好まないネイティブ・スピーカーもおり,その理由の1つは,接続詞が冗長に用いられていることではないかと推測されるが,実際にはかなりよく見かけるものであり,ここでは特に問題にしない)。特に注目してほしいのは前者である。カンマだけでは,節と節とをつなぐ能力はないので,A, Bの形は通常認められない。しかし,この2つの節を文法的につなぐ能力を持つbutを使えば,問題なくつなぐことができるようになる。
 従属接続詞thoughを使う場合,それが導く従属節は主節の前に来ることも後に来ることもできるが,従属節を独立して使うことはできない。

 一方,howeverを使う場合は,前者の形が認められず,後者のみが可能になる。

副詞であるhoweverには2つの節をつなぐ文法的な能力がないので,前者は不適格となる。一方,後者は,ピリオドによっていったん文が終わっており,後続文の文頭のHoweverは2つの文を意味的につなぐはたらきしかしていない。また,howeverは副詞なので,文中に挿入されることもある。
 これらをふまえて,以下の例を見てみよう(期せずして,Butで始まる文も含まれているが,ここでは問題にしない)。

 Martin famously declared that the Fed's job was "to take away the punch bowl just as the party gets going." By that he mainly meant that the Fed should raise interest rates to prevent a booming economy from overheating, which could cause inflation. But his remark was also interpreted to mean that the Fed should try to prevent "irrational exuberance"―Greenspan's phrase―in the financial markets.
 While Greenspan warned against excessive exuberance, however, he never did much about it. ... (Paul Krugman, The Return of Depression Economics. p.142)

従属接続詞whileはそれが導くGreenspan warned ...という節と,he never did much about itという主節とをつないでいる(ここでの意味は対比・対立)。これに対して,副詞howeverは,前の段落の終わりの文と,howeverを含む文とをつないでいるのである。通常,howeverは文中にあってもできるかぎり文頭で訳すようにするので,「しかしながら,グリーンスパンは…注意したが,それについて取り立てて何かをしたというわけではない」と解釈することになるのだ。
12:48:05 - yhatanaka - No comments - TrackBacks