院試塾ブログ
インターネット大学院予備校代表・畑中泰道のブログ

「志望理由」を分析する—研究計画書での記述

 研究計画書の1項目として,あるいはあわせて提出する書類として,「志望理由」の記述が要求される場合がある。自分が受験しようとしている大学院を志望する理由を書くのだから簡単そうなものだが,うまく書けない場合も多い。院試塾の「研究計画書作成指導」でも,受講生が苦労するポイントの1つである。
 ぼくの考えでは,志望理由は大きく2つに分けて考えるのがよい。

1つは,なぜ大学院に進学したいのか,である。大学を卒業していれば,必要な情報の所在をつきとめて入手し,それをもとに自分で研究・学習を進めることもできるはずだ,と大学では考えている。大学院に進学したい理由を合理的に説明するためには,自分でやることの限界を提示し,その限界が大学院での研究・学習によって越えられることを示さなければならない。これができなければ,単なる「お勉強」のために大学院に来るのではないか,という疑念を持たれてしまう。大学院は手取り足取り教育を行う場所ではない。明確な目的意識を持った者が,大学という資源を利用し,教員のサポートを得ながら「自分で」研究を行う場所だ。この項目をきちんと述べられれば,自分には少なくとも自分で研究を行う「基礎力」があることも伝えることができるだろう。
 もう1つは自分が受験する大学院を特に志望する理由だ。通常,同じ分野を研究できる大学院は複数存在するから,その中でなぜ「この大学院」での研究を望むのか,を説明する必要がある。指導を受けたい先生がいる,魅力ある講座群が開設されている,自分の研究で利用価値の高い施設・設備がある,など,その大学院が他とは違うポイントがあるはずだ。通学しやすいといった理由もあるだろう(そしてそれも理由の1つにはなりえる)が,内容面を重視したほうがよいだろう。
 大学院進学の理由はさらに大きく2つに分けることができるだろう。研究・学習そのものに関する内容と,将来の進路と関連する内容だ。

研究・学習に関連する記述はさらに,より高度な学問研究を行うことが自分になぜ必要か,自分にどんな価値や意味があるか,に関する内容と,これまでに自分なりに進めてきた研究学習にどんな限界が生じ,それを大学院ではどのように克服できるか,という内容に分けて考えるとよいだろう。
 将来の進路との関連は特に専門職大学院で重要となるだろうが,それ以外であっても,研究職に就くか就かないかにかかわらず,修了後に希望する進路と大学院での研究・学習との関連性を述べる必要がある。これも大きく2つに分けるとよい。1つは希望進路でどんな学識やスキルが必要となるかと,それが大学院でどのように得られるかについてである。もう1つは希望進路で大学院修了の学位や与えられる資格,あるいは国家試験の受験資格が得られるといった点になる。この理由をまず挙げる人も多いが,大学院が一義的には研究や高度な教育の場であることを考えれば,この点を過大に強調することは避けたほうがよい場合が多い。
 一方,自分が受験する大学院を特に志望する理由については,以下の3つに分けて考えるのがよいだろう。

これらをさらに細分すると以下の図のようになる。

 多くの大学院では,1人ないしは複数の指導教員を指名するシステムになっている。この場合,もちろん最終的な決定は入学後,特に修士・博士論文の執筆を開始する段階で行うことになるが,口頭試問などでも指導希望教員を尋ねられることが多い。教員は大学院の最大の「資源」であり,自分の研究を進めるうえでどの教員の指導を受けたいかはできるかぎり明確にしておいたほうがよい。この際,自分の研究テーマとの整合性を十分に検討しておくべきことは言うまでもない。また,主に指導を希望する教員以外にも,研究を進めるうえでアドバイスを受けたい教員や,関連分野での指導を受けたい教員がいれば,あわせて記述しておくとよい。
 開設講座についても,自分の研究と直接関係する講座と,関連分野に関して特に重要なものとに分けて考える。前者については,自分の研究テーマとの具体的な関連づけが特に重要となる。後者には,さらに特色のある講座(外国語やコンピュータ関連,あるいは学問分野を横断する講座など)も含めてよいだろう。
 施設・設備についてここに挙げたのはあくまで一例にすぎない。文科系,特に人文科学においては,文献が研究を進めるうえできわめて重要となる場合が多く,特定の文献が継続的に利用できることは,その大学院に進学する大きな理由となりえる。また,図書館や資料室の充実度も研究を進めるうえで重要な場合が多いだろう。理科系であれば実験設備等に言及することも必要となるだろう。その他,図中の項目を中心に,「自分の研究に必要なもの」で「その大学院で利用できるもの」は何かをしっかりと検討するのがよい。
 今回は志望理由について検討したが,この過程で研究テーマや研究方法についてもあわせてより深く考えることになるだろう。このようなことを考えていくなかで,自分の研究に対する意識をより明確にすることが大切だ。

posted at 22:03:51 on 10/23/05 by yhatanaka - Category: 大学院入試

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