院試塾ブログ
インターネット大学院予備校代表・畑中泰道のブログ

19 September

言い換えから語義を理解する—図解との合わせ技

 英語では「言い換え」が多用されるが,読解の場面で積極的に活用すればずいぶん有益となる。例を挙げて検討していくことにしよう。

… computers are serial, doing one thing at a time; brains are parallel, doing millions of things at once. Computers are fast; brains are slow. Computer parts are reliable; brain parts are noisy. (Steven Pinker (1997) How the Mind Works. Penguin. p. 26. underline added)

 下線部に注目してほしい。ここのserial / parallelをどう解釈するか。結論から言えば,serialは「順次処理の」,parallelは「並列処理の」となる。コンピュータ科学などで用いられる専門用語である。しかし,この用語をどう訳すかはさほど問題ではないだろう。イメージとして的確にとらえられるかどうかのほうが問題だ。
 ここでカギとなるのが,それぞれの言い換えである。serialをdoing one thing at a time,parallelをdoing millions of things at onceと,それぞれ言い換えている。つまりserialとは「1度に1つのことをする」,parallelとは「1度にたくさんのことをする」という意味でここでは用いられている。
 まずはserialから図解で考えてみよう。

→が処理の流れ,記号は1つずつの処理を表している。serialの場合は処理の流れが1つだけで,その流れのなかで1つずつの処理がおこなわれる。あわせて確認しておくとよいのが,serialはseriesの形容詞形である点だ。
 続いてここでのparallelの意味を図解すると,以下のようになるだろう。

大切なのは,→で表される処理の流れが複数あり,それが縦に平行に,つまりparallelに並んでいる点だ。実は,これがparallelという語がここで問題になっている意味で用いられている理由なのだ。このように図解することで,根源的な意味と拡張された意味とのつながりも見てとることができる。
 本題からはズレるが,もう1つnoisyという語にも注目してみたい。引用では対比が流れの基本になっているから,noisyの意味もreliableとの対比で考えてみるとよい。辞書でnoisyという形容詞を引いてもあまりピンと来ないが,名詞noiseを見ると,たとえば『リーダーズ英和辞典』には「【電算】ノイズ, 雑音《回線の乱れによって生ずるデータの誤り》」という意味が挙がっている。ここで注目したいのは「データの誤り」である。これはreliableの意味と明確に対比される。以上から,このnoisyは「誤りが多い」と考えればよいことがわかる。
 つねづね書いているが,機械的な作業だけでは英文の意味は読みとれない。今回書いたような形で,自分の頭で考えながら読み進めていくことが大切なのだ。
21:22:46 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

01 September

sampleの語義—図解が生きる

 sampleを辞書で引いてみると,実にいろいろな訳語が載っている。たとえば『ジーニアス英和辞典』を見ると,名詞としては

  1. 見本,標本,サンプル;実例

  2. 商品見本,試供品

  3. [統計]標本,抽出標本


とある。この他に,たとえば医療の場面でblood sampleと言うとsampleは「検体」と訳すことになるなど,文脈に応じて多様な訳語を考えなければならない。
 動詞のsampleをやはり『ジーニアス』で見ると

  1. …の見本をとる;…の見本をとって試す[試験する];…を試食[試飲]する

  2. …を実際に試す,経験して知る

  3. [音](音色をコンピュータで調整するために)〈音〉を取り出す,サンプリングする


となっている。
 この訳語をすべて覚えようとするととてもではないが,中核的意味をきちんとイメージでとらえておけば,その場に応じた訳語を考えることができる。こうした場合に図解が役に立つ。
 上では名詞から検討したが,sampleの中核的意味は動詞の用法から考えたほうがわかりやすい。以下の図を見てほしい。

動詞sampleは,ある母集団からその一部を抽出する,という意味だ。その一部は母集団全体の代表となることが意図されている。たとえば,試食するのはほんの小さなかけらであるが,そのかけらから商品の味がわかると思って試食する。「実際に試す,経験して知る」の用例として『ジーニアス』にはsample the hardships of seafaring life「海上生活をしてみて辛苦を知る
」というのが挙がっているが,これも短い時間の海上生活の体験からその全体像を知る,ということだ。
 動詞が抽出の「過程」を表すのに対して,名詞はその「結果」を表す。図解してみると以下のようになるだろう。

上でblood sampleのsampleを「検体」と訳すべきだと述べた。採取する血液はわずか数ccであるが,その数ccを検査することで,全身の血液という母集団について知ろうというのが血液検査である。統計学の「標本」というのも同じ考え方に基づいている。
 単語を覚える,と世の中では簡単に言う。そのために用いられるのは,多くの場合ただ訳語がわずかな用例とともに載っている「単語集」だ。一見,単語集で単語を覚えるのが近道だと思えるかもしれないが,たとえばこのsampleを見てもわかるように,根底にある基本的なイメージをきちんと理解するのが,実はいちばんの近道なのだ。
17:54:40 - yhatanaka - No comments - TrackBacks