院試塾ブログ
インターネット大学院予備校代表・畑中泰道のブログ

28 January

語の意味を詳しく考える—general / particular / specific

 語の意味を訳語で単純に「暗記」することの問題点は,すでに何度か指摘してきた。今回はgeneral / particular / specificという3つの語を題材に考えてみたい。generalはparticular / specificと対義関係にあるが,particularとspecificの間にももちろん違いがある。おおむね以下のようにとらえておけばよいだろう。

 まずはgeneralから見ていこう。「一般的な」という訳語があまりに定着しているようで,よく考えずにこの訳語を使ってしまう傾向が見られるが,たとえばThere has been a general decline in standards.[LDOCE]は「全体におよぶ」ととらえるべきだし,I have a general idea of what I want to express.[LDOCE]は「漠然とした」と解釈しなければならない。
 「全体におよぶ」も「漠然とした」もgeneralの根本的な意味から生じたものであろう。この根本的な意味は以下のように図解できると思われる。

「全体におよぶ」とこの図解との対応関係は特に説明の必要もないだろう。「漠然とした」は一見関係がとらえにくいかもしれないが,この意味での対義語となるspecificと比較してみるとわかりやすい。specificの意味は以下のように図解できる。

Could you be a little more specific?[Activator]が「もう少し具体的に言っていただけませんか」という意味になることからもわかるように,specificは「対象となる範囲が狭い」が基本だ。この意味や図解と,generalの「漠然とした」という意味とその図解とを比較してみてほしい。
 particularはどうか。specificとの違いは微妙な部分もあり,英英辞典の語義を見ても,specificを説明するのにparticularを用いていたりもするのだが,particularには「同種のものとの比較・対比」の意味があるように思われる。COBUILDを見ても,You use particular to emphasize that you are talking about one thing or one kind of thing rather than other similar ones.とあり,類似のものとの比較が念頭にあることがわかる。また,同じくCOBUILDで名詞形のparticularityを引くと,The particularity of something is its quality of being different from other things.とあり,やはり他のものとの違いが問題となることがわかる。英和辞典を見ても,「(あるものを同種のほかのものと区別して)」(『ランダムハウス英和大辞典』)といった注意書きがある。訳語としても「個々の」「個別の」のように,他のものとの区別に焦点を当てるものが挙がっている。each particular item「個々の項目」などは,particularを「特定の」と訳してもピンとこない例の1つだろう。
これらの点を考慮してparticularを図解すると以下のようになるのではなかろうか。

 1つの語につき1つか2つの訳語を覚えておけば大丈夫,という勉強法は,たしかにとっつきやすいかもしれないが,正確な理解の大きな妨げとなる場合もある点を,特に初・中級学習者はしっかり認識しておいてほしい。
21:19:10 - yhatanaka - 4 comments - TrackBacks

22 January

「本物」の英文読解力—きちんと読むために

 英文をきちんと読むためにどんな知識・理解・能力が必要であるかについては,このブログや『院試塾の現場から』でも何度か述べてきた。要するに,きちんと読むためには英文にていねいに接し,正確に理解しながら読むことがきわめて大切だ,と言ってきたつもりだ。今回は,実例でそれをいっしょに確かめていこう。以下の引用を題材とする。

Jacques Monod's book Chance and Necessity (1971) caused (1)something of a stir (2)on its publication, chiefly on account of (3)his total rejection of any purpose within the cosmos. All that Monod was doing was exploring the (4)implications of (5)a genetically driven account of reality, in which accidental changes were propagated by DNA, and subjected to the "teleonomic" filter of natural selection. (Alister McGrath (2005) Dawkins' God: Genes, Memes, and the Meaning of Life. p.43.)

 下線部のポイントを順に検討していこう。まずは(1)である。ポイントはsomething of a ~という表現だ。somethingもofもaも,もちろん知っている語ではあるだろうが,「何かおかしいぞ」と思って辞書で調べようという気になれるかどうかが問題だ。『ジーニアス英和辞典』を引いてみると,something of a ~という成句として「《略式》[通例肯定文で] ちょっとした…;かなりの…」と説明している。用例の1つは,I found it something of a disappointment.「それにはかなりがっかりしました」で,I found it rather disappointing.とほぼ同じ意味とある。ついでながら,ratherの意味にも注目しておいてほしい。
 続いて(2)のon its publicationだ。ここのポイントは2つある。1つは前置詞onの意味,もう1つはits publicationの名詞化である。このonはon Vingのon,たとえばOn hearing the news he turned pale.(『ロイヤル英文法』)のonと同じものだ。やはり『ジーニアス英和辞典』を見ると,18番の語義として「[動名詞または動作を示す名詞を共に] …と同時に,…するとすぐ;…のすぐあとで;…すると(when)」とある。用例にも動名詞が続くものと「動作を示す名詞」が続くものの両方があり,後者に該当するものにはon receipt of the money「金を受け取るとすぐ」やOn her death, her house was sold.「彼女の死後すぐに彼女の家は売られた」がある。特に2番目の用例は,引用文でのonの用法を考えるうえで有意義である。on Vingを機械的に慣用表現として暗記するのではなく,なぜonが用いられているのかを少しでも突き詰めて考えようとすれば,この解説にはたどり着けるはずで,そうしないのは「知的怠慢」以外の何ものでもない。
 もう1つのポイントである名詞化だが,ここでは名詞化が受動態に対応する点が重要だ。すなわち,ここのits publicationはit was publishedという受動態から生じた名詞化なのである。言語学でよく知られている例としては,the city's destruction (by the enemy)というのがある。これはthe city was destroyed by the enemyから生じたものだ。名詞化につく所有格は主語を表すが,これは能動態の主語に対応する場合もあれば,受動態の主語に対応する場合もある。
 (3)のポイントに移ろう。ここも名詞化である。名詞化形に続くofは,元の動詞が他動詞であればその目的語,一部の自動詞の場合にはその主語を導く。この場合はもとの動詞rejectが他動詞なので,その目的語に対応すると考えればよい。所有格についての考え方は(2)とまったく同じだ。あとは,形容詞totalは元々副詞totallyであり,rejectが名詞化されるのに伴って形容詞になったと考えればよい。(3)の部分が生じる過程を簡単に図解すると以下のようになる。

 (4)は語句の意味の詳細な検討が必要となる事例だ。「implication=含蓄」という単純な暗記ではとうてい正確な理解には到達できない。きちんと辞書を引き,その記述を十分に確認することが大切なのだ。『ジーニアス英和辞典』の2番目の語義に「密接な関係,影響」という訳語があり,用例にもHis appointment will have broad implications for the future Japan-US relations.「彼の就任は将来の日米関係に幅広い影響をもつであろう」とある。と言っても,この語義はきちんと元の動詞implyまでさかのぼって考えることができる。COBUILDを見ると,The implications of something are the things that are likely to happen as a result.と解説があり,A→Bというimplyの根本的意味から派生したものであることがわかる。
 最後の(5)は-ly副詞の解釈とdrivenの意味が問題となる。まずはdrivenから考えよう。実はこれがなかなかやっかいである。というのも,辞書でdrivenを引いてもたいした情報は得られないし,driveのもとの意味から考えるのもかなり難しいからだ(「動かす」というdriveの根本的意味から生じた用法ではあるが,かなり抽象的なレベルまで意味が拡がっているので)。『ジーニアス英和大辞典』には,-drivenが「連結形」としてdrivenとは独立した見出しとなっており,「…に影響を受けた,…に適合する,…によって動く,…に反応する」と説明している。ぼくならこれに「…を中心とする」を加える。問題となっているgenetically drivenもこの解釈で考えていけばよい。
 ちなみに,やはり『ジーニアス英和大辞典』を後方一致検索してみると,chain-driven,computer-driven,consensus-driven,consumer-driven,demand-driven,event-driven,menu-driven,order-driven,owner-driven,quote-driven,sail-driven,technology-drivenが複合語として挙がっており,これらを見ると「…主導の」といった訳語が適切である場合もあることがわかる。
 -ly副詞の解釈については,[名]gene→[形]genetic→[副]geneticallyという派生過程を考えてみればよい。上の複合語の例からわかるように,-drivenの前に来る要素は名詞で,driven by XがX-drivenという形になっている。以上から,gene-drivenがgenetically drivenとなっており,その意味は「遺伝を中心とする」だろうと推察することができる。
 このように考えながら英文を読むことで,きちんとした理解に到達することができる。これまでの英文に対する接し方を反省する機会となれば幸いだ。
23:08:11 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

16 January

辞書を「越える」—語の意味と文脈

 resourceには動詞の意味・用法がある。『ジーニアス英和大辞典』には「<組織>に〔資金・設備などを〕供給する」とある。『リーダーズ英和辞典』や『ランダムハウス英和大辞典』には載っていないようだ。Oxford Dictionary of Englishを見ると,provide with resourcesという語義があり,a strategy which ensures that primary health care workers are adequately resourcedという用例が挙がっている。Shogakukan Corpus NetworkWordbanks Onlineで動詞のresourceを検索すると76例がヒットするが,例文をざっと見ると名詞のものが相当混入していて,最初の34例中動詞の例は3例のみである。これらはいずれも『ジーニアス英和大辞典』の語義に一致する。
 しかし,こうした辞書の解説が当てはまらない用例に出会った。All Jesuits resource the Exercises for regular retreats; it is the roadmap for their spiritual formation. But many others use it, too. (Tom Beaudoin (2003) Consuming Faith: Integrating Who We Are with What We Buy. p.46)というものだ。このresourceは「情報源として利用する」と解釈できそうで,上で検討した用法とはまったく異なるものである。これまでのところ,辞書でこの用法を収録したものは確認できていない。
 なぜぼくが上記引用のresourceを「情報源として利用する」という意味だと考えるのか。後続の文,many others use it, tooがその根拠だ。[A]All Jesuits [B]resource [C]the Exercisesと[A']many others [B']use [C]it(=the Exercises)という2つの文がtooでつながっており,それぞれの部分が対応している。この対応関係から考えると,このresourceは少なくとも「使う」という意味であるということになる。
 言葉は常に変化していて,新しい語が出てくるのはもちろん,すでに存在する語も新しい意味で用いられるようになる。辞書は常に古くなっていく。だからこそ辞書は改訂されるし,それゆえ古い辞書をいつまでも使い続けることはできない。時として,今回のように,辞書にはない用法に出会うこともある。しかし,語のもとの意味と文脈とを十分に考え合わせれば意味がわかることもある。今回とりあげたのがその例だ。この読み方は未知の単語の意味を推測するのにも応用できる。
23:19:55 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

07 January

英語充実モデル電子辞書

 英語を学ぶうえで必要不可欠なツールとなりつつあるのが電子辞書である。大部の辞書を複数持ち歩くことはほぼ不可能だが,電子辞書を使えば出先でも簡単に本格的な辞書を複数参照することができる。
 なかでもこのところ「英語充実モデル」がいろいろと発売されている。『ジーニアス英和大辞典』と『リーダーズ英和辞典』+『リーダーズ・プラス』の英和辞典を中心に,和英辞典,英英辞典,英語特殊辞典などを収録している。英語の簡易コーパスや英語版百科事典などまで収録しているものもある。
 電子辞書の利点は,単に本格的な辞書をコンパクトサイズで複数利用できるだけではない。紙の辞書やパソコン用CD-ROMにはない利点もある。その1つがジャンプ機能だ。該当する語から別の辞書の該当記述に移動できる,という機能だが,この機能を活用することでいろいろな辞書の記述を瞬時に比較する,といったことが可能になる。また,例文や英英辞典の記述に未知の語が出てきた場合にも,この機能を使えば楽に辞書を引き直すことができる。こうした状況に多く遭遇する中級学習者には特に便利な機能だろう。
 また,辞書の例文を検索できるのも便利だ。この機能は,単独の辞書を対象とするのであればパソコン用CD-ROMでも提供されているが,複数の辞書の例文を横断検索できる機能(「例文検索」と称している場合が多い)は電子辞書ならではである。
 このように便利な電子辞書であるが,英語充実モデルとなるとけっこうな値段がする。ところが,実際に手にとって使ってみないとわからないことも多い。そこで,これから英語充実モデルを購入しようと考えている人の参考にしてもらえるように,『電子辞書大研究』に簡単な比較サイト(「英語充実モデルの比較」)を作成した。一度見てもらえると幸いだ。
10:37:26 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

03 January

英語表現の相互関係—1つの表現から表現を増やす

 1つの英語表現を覚えたとき,その1つだけにとどまるか,より多くの表現が使えるようになるかは,英語表現の相互関係を知っているかどうかで決まると言える。事例から検討してみよう。
 be in disfavorという表現がある。He was in disfavor.といったように用いられ,「人気がない」「嫌われている」という意味である。言うまでもなく,このdisfavorはfavorという名詞に反対の意味を表す接頭辞のdis-がついたものだ。
 be in disfavorの意味は以下のように図解できる。状態を表すのに前置詞inが使われている点に着目しておきたい。

この理解にもとづいて表現を増やしていくことができる。静止状態を表す前置詞inを移動表現であるintoに変えると,「変化」の意味を表すことができる。以下のようなイメージでとらえるとよい。

この転換に基づく表現として,たとえばfall into disfavorというのがある。He fell into disfavorとすると,「彼は人気がなくなった」という意味になる。fallはたとえばfall illのように,悪い状態への変化を表すことがあるから,この表現は納得のいくものである。なお,『英和活用大辞典』には他に,come into disfavorというのもある。
 このcome into disfavorからさらに,bring O into disfavorという表現も可能であることが,やはり『英和活用大辞典』からわかる。His statement brought him into disfavor.で「その発言のせいで彼は人気がなくなった」となる。一般的に,A comes (to ~)はB brings A (to ~)と自・他動詞で対応するが,この表現の場合にもこれが生きていることがわかる。
 なお,このdisfavorには前置詞withが続いて「〜に人気がない」という意味を表すことが可能だ。このwithはpopular with ~のwithと同じものと見てよいだろう。
 このように,英語の基本がわかっていれば,1つの表現から表現を増やしていくことができる。こういう「基本」をしっかり学ぼう。
09:47:09 - yhatanaka - No comments - TrackBacks