院試塾ブログ
インターネット大学院予備校代表・畑中泰道のブログ

26 June

keepとleave—英文法講話(2)続編

 英文法講話(2)の続編として,第5文型で用いられるkeepとleaveの違いについて説明しておきたい。たとえば,以下の2つの文が表す状況はどのように異なるだろうか。
 (1) He kept the door open.
 (2) He left the door open.
keepとleaveの根本的な意味の違いに着目すれば簡単だろう。keepの基本的イメージは「(くずれないように)そのままの状態に保つ」(『英語語義イメージ辞典』)であり,「ドアが開いている」という状態が「くずれないように」維持している,ということになる。たとえば,手で押さえたりストッパーをかけたりして,ドアが閉まらないようにしている,ととらえればよい。これに対してleaveは「そのままにして去る」(同)が基本的イメージだから,ドアが開いている状態でその場を離れ,それがそのまま残っている,ととらえることができる。
 以下の2つの違いはもう少し微妙になる。
 (3) He kept me waiting.
 (4) He left me waiting.
しかし,基本的なとらえかたは変わらない。(3)では彼が「私が待っている」状態を(少なくともある程度は)意図して維持しているのに対して,(4)ではたとえばそのまま忘れて帰ってしまった,という状況などを考えてみればよいだろう。だから,「待たせてごめんなさい」と謝るときには,通常,
 (5)I am sorry to have kept you waiting.
と言うのであって,
 (6)×I am sorry to have left you waiting.
はかなり特殊な場合にしか用いられないと言ってよいだろう。
 構文単位で覚えるのではなく,根本的な意味と発想を大切にして学習したいものだ。
23:49:44 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

22 June

第5文型—英文法講話(2)

 英文法講話の第2回は第5文型をとりあげる。第5文型の正確な理解こそ,英文法を十分に活用するうえで必要不可欠だ。
 第5文型の最大の特徴は,O+Cがまとまって1つの状況を表す点だ。つまり,文のなかにさらにO+Cの「文的」な要素が含まれており,多重構造をなしている。この多重構造が,第5文型が多様な意味を持ち,解釈が難しくなる原因だ。
 続いて補語に注目したい。第2文型の補語は名詞・形容詞(形容詞には分詞を含む)だが,第5文型の場合にはさらにto不定詞,原形不定詞が加わる。これも第5文型が複雑になる要因だ。
 以上2点を概略的に示すと以下のようになる。

 それでは,いくつか例文を検討しながら,第5文型のポイントを確認していこう。まずはfindが述語動詞となる例だ。[S]They [V]found [O]her [C]dead the next morning.の[O]her [C]deadが状況を表し「彼女が死んでいる」と解釈できる。findは「見つける」が基本だが,この文ではあまりはっきり前面に出して訳さないほうがよい。「彼らが翌日行ってみると彼女は死んでいた」ととらえればよいだろう。
 続いてmakeが述語動詞となる例を検討しよう。Can [S]you [V]make [O]yourself [C]understood in English?を解釈するにあたっては,まず補語が過去分詞になっている点に注目したい。過去分詞は受動関係を表すので,「自分(の言っていること)が(他人に)理解される」というのがO+Cの内容だ。この状況をmake「作り出す」,というのだから,全体としては「英語で自分の言いたいことを他人に理解してもらえますか」,つまり「あなたは英語で言いたいことを伝えられますか」となる。
 述語動詞がhaveになると,ある状況を持つ,つまりは経験するという意味になる。[S]I [V]had [O]my bicycle [C]stolen.などを考えてみるとよいだろう。makeの場合は自分の意志で作り出すのに対して,この文では被害の意味が出る。「自転車が盗まれるという状況を持つ」から考えを進めていけばよいだろう。もっとも,haveの意味にはある程度の幅があり,[S]I [V]will have [O]my son [C]drive you home.だと,「頼んでしてもらう」という意味になる。この文のhaveをmakeに変えると,「作り出す」が強制の意味を持つようになる。makeとhaveの基本義の違いから出てくる差だと考えてよいだろう。
 第5文型は奥が深いが,基本はO+Cが1つの状況を表すことと,主語とその状況との関係が述語動詞によって表されることだ。しかもその関係は,多くの場合述語動詞の基本義にさかのぼることができる。
22:22:45 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

17 June

納得のゆく英文解釈

 このタイトルは,安井稔先生の本のものだ。筑波大学で英語学を学んだ者にとって,直接教わったことはなくても,偉大な存在の先生である。ご子息の安井泉先生だけではなく,安井稔先生の教えを受け継いだ多くの先生方から,ぼくは英語と英語学を学んだ。
 さて,この「納得のゆく英文解釈」というのは,ぼくが院試塾で英語を指導するときの理想でもある。表面的に語句の意味を辞書で引いて(前のほうに挙がっている)訳語を,機械的に文法・構文の規則(より正確に言うなら,訳しかたの「パターン」)に当てはめながらつなぎ合わせていくという,何のためにやっているのだかよくわからない「単純作業」をただこなしていくのではダメだ。安井先生の表現を借りるならば,「わかったような,わからないような,そして,結局,要領をえない英文解釈から抜け出」(p.8)す過程が,院試塾で英語を学ぶ過程なのである。だから院試塾で英語を学ぼうと志す人にも,この気持ちをしっかり持ってもらう必要がある。「ことなかれ主義的な,とおりいっぺんの英文解釈」(p.8)では,学問研究の場で,「思想」を読み取るために英語を使うことができないからだ。単に「試験に通ればよい」というだけのケチな了見の人は,何も院試塾で学ぶ必要はない。トップページにも書いてあるとおり,そうしたニーズを最大限に満たしてくれるところは別に存在する。院試塾の目標は,まともな「大学院生を創る」ことにあるのだ。
 こうした,本当の意味での英文読解を学ぶために必要な姿勢とは何か。示唆に富む一節があるので引用したい。

この表現[... the elders with whom I was bred ...]は,筆者が学部の学生であったとき,福原麟太郎先生の演習で出くわしたものである。私は,括弧内に示されているような日本語[私がいっしょに育った年長の人々]に,これを訳した。先生は,すぐ,「それはどういうことですか」と問われた。私は,同じ訳文をもう一度繰り返した。先生は「それはどういうことかね」と重ねて問われた。私は,答えに窮した。顔は紅潮し,胸は早がねを打った。沈黙が続いた。やおら,先生は,「私が子供であったとき,大人であった人たちは,ということではないですか」と言われた。無条件降伏であった。が,そのとき大きな鱗が,はらりと,目から落ちるのを感じた。(pp. iv~v)

 たかが英文解釈である。しかも,「私がいっしょに育った年長の人々」という訳は,少なくとも試験のレベルでは問題ないと思えるかもしれない。しかし大切なことは,このレベルで満足しないことだろう。この訳と,「私が子供であったとき,大人であった人たち」という解釈は明らかに異なる。まずはこの違いを認識できることが大切だ。そしてもう1つ,より正しく深い解釈を示されたときに,それを十分に納得して「無条件降伏」できる姿勢も大切だ。「私の訳でも間違ってはいないでしょう」と言うようでは,いつまでたってもこの深い理解には到達できない。しかし残念ながら,こうした姿勢をきちんと持ち合わせている人は少ない。
 それでは,きちんと「できる」人の英文読解の知識・技術とはどのようなものなのか。これについても引用で見てみよう。You go on wishing that you could desire what desire has left behind. (p.6)という,老いを感ずるとはどういうことかについて述べた文をどう解釈するか,についての,語句の意味解釈についての説明である。なお,試験答案的な訳として,「欲望が残していったものを欲しがりたいと思い続けることだ」が挙がっている。

wishは,通例,実現が困難,あるいは,不可能なことを心から望む場合に用いる。desireも「強く望む」ことを表すが,五体の欲望というニュアンスがある。what desire has left behind「欲望が(青春の中へ)置き去りにしてきたもの」。全体で先行節の動詞desireの目的語になっているから,欲望の対象物であることになる。couldは仮定法。「実際にはできないのだが,できたらなあ」という気持ち。文頭のyouは,総称人称の用法。「一般に人々は」の気持ち。(p.7)

こうした知識から,「人々は,欲望が置き去りにしてきたものを心から欲しがれたらいいのになあと思いながら,日を重ねてゆく。[それが老いというものだ]」という訳,さらには「昔あれほど食べたい,飲みたい,してみたいと思っていたものに対する渇望がすっかりなくなってしまった。あの渇望が今となっては懐かしい。ああ,もう一度,ああいった渇望を味わってみたい。そう思い続けながら年を重ねてゆくこと−それが老いというものだ」(p.6)という理解にまで到達できるのである。「wish=願う」「desire=願望」「what=〜なもの」...といった単純なとらえかたをどれだけ量的拡大してみたところで,それだけではきちんとした解釈にはたどりつけないのである。
 読者にもう一度問う。何のために英文読解を学ぶのか。試験で点数をとって合格するためか。もしそうなら,「厳しい要求」をする院試塾には向かない。「学問の世界で通用するような,『思想』を読み取れるようになること」を本当に真剣に目指すなら,院試塾で学ぶことは大きな意味を持つはずだ。なぜなら,院試塾は,整理された情報を消費主義的に「一見親切に」売るのではなく,受講生自身が徹底的に格闘し考えることを促す指導を行うからだ。
11:01:04 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

14 June

as ~ as ...—英文法講話(1)

 今回から,「英文法講話」として,英文法のポイントを順不同で,基本的な発想にまでさかのぼって解説するシリーズを始めたいと思う。第1回はas ~ as ...の「同等比較」だ。
 「彼は私と同じくらいのCDを持っている」は英語で何と言うだろう。一見簡単そうだが,実際にやってみると意外と手間取る人がいるはずだ。as ~ as ...を中心に組み立てようとすると,as many as ...をまず作ろうとしてしまうが,これが間違いの始まりだ。
 基本に忠実に考えよう。まず,修飾要素をできるだけ少なくした基本文を作る。今回の場合,He has many CDs.となる。これにas 〜 as ...を加えていくわけだ。
 英文法のいちばんの基本は品詞である(「英文法でいちばん大切なこと」参照)。2つのasの品詞はどうなっているか。前のasが副詞,後のasが接続詞(または前置詞)である。前のasから適切な位置に入れてみよう。すでに見たとおりこのasは副詞で,「同じくらいたくさんの」という意味にしたいのでmanyを修飾させる。すると,He has as many CDs.となる。続いて後のasを入れる位置を考える。これは接続詞で,as I haveという節を形成する。接続詞は節と節とをつなぐものだから,先に作ってある文にそのまま続ければよい。これでHe has as many CDs as I have.となる。
 この文を見れば,最初にas many asを作ってしまうとなぜ失敗するかがわかるだろう。基本に忠実に考えることの重要性も同時に理解できるはずだ。
 関連事項として,「〜倍」を表す倍数表現についてもふれておこう。2倍をtwice,3倍をthree timesと表現するが,これは「同じくらいを2回」「同じくらいを3回」という発想に基づくものだ。だから「〜回」と同じ表現を用いるのである。この発想がわかれば,twiceやthree timesが前のasの前に入り,たとえばHe has three times as many CDs as I have.となることもすんなり理解できるだろう。
20:49:37 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

11 June

時事英語の表現—A-turned-B

 A-turned-Bという表現がある。時事英語で多く見られる表現だ。『プログレッシブ英和中辞典』を見ると,「…から転身した」となっており,an actor-turned-politician「俳優出身の政治家」という例が挙がっている。
 最近読んだ英字新聞でも,たとえば6月9日付The Daily Yomiuri 8面の日本銀行政策委員会審議委員の須田美矢子氏を紹介する記事でThe professor-turned-policymaker likes to talk about money to children and students.というのが出てくる。同じくThe Daily Yomiuri 8日付1面では,建築家の安藤忠雄氏を紹介する記事の見出しにBoxer-turned-architect fights onという表現が見られる。
 さらに,先日逮捕された村上世彰氏についても,a bureaucrat-turned-fund manager (The Daily Yomiuri, 6月6日付1面),the 46-year-old bureaucrat-turned-financier (The Japan Times, 6月6日付1面)といった表現がなされている。
10:15:44 - yhatanaka - No comments - TrackBacks