院試塾ブログ
インターネット大学院予備校代表・畑中泰道のブログ

27 September

比喩の力—Cosmic Calendar

 ものごとを理解するうえで,適切な比喩は大きな力となる。そうした適切な比喩の好例が,Carl Saganの「宇宙カレンダー」(The Cosmic Calendar)である。The Dragons of Edenで示され,有名なTVシリーズCosmosにも登場するこのカレンダーは,宇宙の始まりであるビッグバンから現在までの150億年を1年に縮めたらどうなるか,というものだ。地球が誕生するのが9月14日,生命の誕生が9月25日頃,といったように,宇宙の歴史のなかで地球や生命がどのくらい長く存在しているかがかなりわかりやすくなる。
 人類の歴史に目を向けると,このカレンダーという比喩の威力がさらにわかってくる。人類の誕生は,このカレンダーでは12月31日の午後10時30分頃。つまり,宇宙の歴史を1年で表すと,人類の歴史はたった1時間半しかないのだ。生命が誕生してからでも3ヶ月以上たってからのことである。この2000年くらいのできごとは何と最後の4秒くらいに圧縮されてしまう。は宇宙の歴史が長い,とか,人類の歴史は実は驚くほど短い,と言葉で言ってもなかなかピンとこないが,このようにカレンダーを使うと実によくわかる。
 なお,宇宙カレンダーの1例はdiscoveryschool.comで見てほしい。また,紹介した本やDVDでぜひCarl Sagan自身の説明を見てほしいと思う。

19:02:14 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

程度の意味を表すfar

 farが程度の意味を表すことがある。このこと自体は,英文法で比較を学習するときに,farの比較級・最上級が2種類あると学んで知っているはずだ。たとえば,『ロイヤル英文法』には「『程度』などのように抽象的に『さらに,その上の』の意では,further,furthestを用いる」という記述がある。
 しかし,実際の英文で程度を表すfarに出会うと,具体的に解釈するのが意外に難しいようだ。以下の文で確認してみよう。

Think of the cellular metabolism as the engine in your car. Having an engine in and of itself will not get you very far. You need wheels, suspension, brakes, lights, and many other components, each ensuring that the car will run safely on the road. (Albert-Laszlo Barabasi (2003) Linked: How Everything Is Connected to Everything Else and What It Means for Business, Science, and Everyday Life. p.182)

 farの基本的意味に着目して図解すると以下のようになる。

この図解を見れば,「エンジンがあるだけでは不十分で,他にもたくさんの部品が必要だ」という意味がおおよそ読みとれるだろう。具体的な解釈について,さらに辞書の記述を確認してみよう。COBUILDを見ると,You can talk about how far someone or something gets to describe the progress that they make.とある。この説明文は自動詞になっているが,上記引用はこれに対応する他動詞と考えてよいだろう。
 これと密接に関連する語義として,You can talk about how far a person or action goes to describe the degree to which someone's behaviour or actions are extreme.というのがあるが,これを見れば,farが程度表現として用いられることがよりはっきりとわかる。なお,この語義の用例としてThis time he's gone too far.というのが挙がっているが,これは「やり過ぎた」と解釈する。よく見かける表現で,これを覚えておけばfarの程度の意味も理解しやすくなるだろう。
11:20:15 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

25 September

名詞化の解釈についてさらに—continued primacy

 9月22日の記事でも取りあげた名詞化だが,同じ本(Richard Wilkinson (2000) Mind the Gap: Hierarchies, Health and Human Evolution.)にもう1つ興味深い例があるのでとりあげたい。

Although the artificial 'built' material environment has today largely replaced the natural environment, there seemed little reason to doubt the continued primacy of the material environment. (p.7)

primacyは形容詞primeの名詞形だ。この形容詞は通常限定用法でしか用いられないが,この名詞化形ではof ~という要素が続いており,あえてほどくならばthe material environment is primeとなるが,prime = importantと考え,今後はimportantに置き換えて考えることとする。
 さて,ここでの問題はcontinuedという過去分詞がprimacyを修飾していることだ。これをもとの形から考える過程は少々複雑だろう。continueとimportant (= prime)との関係を考えると,[V]continue [O]to be importantという形が思い浮かぶ。to be important is continuedという受動態は実際には許されないが,この形を中間段階として仮定すれば,ここから*importance is continuedをへてcontinued importance (= primacy)にたどりつくことができる。このように考えると,引用の下線部は「ものとして存在する環境が依然として重要であること」と解釈でき,「疑う」の目的語としてうまくつなげて解釈することができる。「持続された卓越」などという意味不明な訳との違いは歴然であろう。
 1つ確認してほしいのが,形容詞に戻して辞書を引くことが大切である点だ。名詞primacyを辞書で引くと,「第一,首位;卓越」(『リーダーズ英和辞典』)といったものしか見あたらないが,形容詞primeのほうを見ると,「首位の, 主な, 最重要な; 優良の, 最良の, 第一等の」といった訳語が挙がっており,名詞だけを見た場合に比べてずいぶん理解が深まる。
20:56:42 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

22 September

意味を考えながら読むということ—名詞化の解釈を中心に

 言語が意味を伝達する手段である以上,読解も当然意味を考えながら行うべきである。しかし実際に英語を教えていると,この前提が必ずしも共有されていないのではないか,と感じることが多々ある。今回は,この「意味を考えながら読む」具体的な流れについて少々考えたい。以下の英文を題材にすることにしよう。

The theme of this book is the remarkable importance, both to health and to the psychological and social welfare of the population, of the extent to which relationships between us are structured by low stress affiliative strategies which foster social solidarity, or through much more stressful strategies of dominance, conflict and submission. (Richard Wilkinson (2000) Mind the Gap: Hierarchies, Health and Human Evolution. p.4)

 まず,importanceという名詞化構文に注目しよう。言うまでもなく,これは形容詞importanceを名詞化したものである。こうした名詞形はそのまま名詞としてとらえるよりも,いったんもとの形容詞に戻して,「重要であること」ととらえたほうがわかりやすい。これと関連して必ず着目しなければならないのが,to / ofという前置詞の働きである。まずはtoだが,これはimportant to ~(〜にとって重要な)のtoを名詞化構文が「継承」したものである。ofは名詞化を解釈するうえではきわめて重要な前置詞で,もとの他動詞の目的語,ないしはもとの自動詞/形容詞の主語を表す。したがって,importanceの名詞化をほどくのを中心として,「〜が…にとってきわめて重要であること」と解釈するわけだ。「〜の…にとっての顕著な重要性」としてもよいではないか,と言う人がいるが,日本語として再解釈が必要な訳文を作る癖をつけると,英語をすんなり理解できるようにはならない。こういう言い訳をすることは,自ら向上することを否定しているに等しいということを自覚してほしい。
 一連の考察過程を図示しておく。

 もう1つ注目したいのが,the extent to which ...という部分である。extentは「程度」で,これと後続のto which ...との解釈で苦労する学習者のいるケースだが,to which ...のtoがto the extentのtoであることがわかればあとはそうやっかいではない。むしろ,こうした名詞構文は間接疑問にほどいて解釈するのが適切である点を確認してほしい。つまり,「…である程度」→「どれだけ…であるか」とい展開することが大切なのだ。なお,この展開については,たとえば『英和活用大辞典』にWe didn't know the extent to which he was responsible for this.「彼がどの程度このことに責任があるかわからなかった」という用例がある。
 さらに,affiliativeという形容詞にも注目しておこう。この語は『ジーニアス英和辞典』だけでなく『リーダーズ』にすら載っていない。しかし,-iveという接尾辞に着目して,もとの動詞affiliateに戻して考えればそう難しくない。affiliateに「密接に関連させる」という意味がある点にきちんと注目し,さらにlow stress affiliative strategiesにwhich foster social solidarityという関係節が続いている点と,much more stressful strategies of dominance, conflict and submissionとの対比関係に着眼できれば,affiliativeが「人と人との関係を深めるような」という意味であると解釈できるだろう。
 この検討過程は以下のように示すことができるだろう。

 「考えながら読む」とは,このように読むことなのだ。
17:27:44 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

07 September

つくばの太陽系—冥王星の運命は?

 今回の記事はまったくの雑記である。
 国際天文学連盟の総会で「惑星」の定義が決定され冥王星が惑星から外された,というニュースをご存じの方は多いだろう。定義の問題で冥王星そのものがなくなってしまうわけではないのだが,(元)天文ファンとしては少々興味を持って成り行きを見守っていた。
 さて,冥王星が太陽系の惑星でなくなって,1つ気になることがあった。ぼくが学生自体を過ごしたつくばの「太陽系」がどうなるかである。つくばの中心,エクスプレスの駅もできた「つくばセンター」から大学に向かう歩道沿いに,太陽系の惑星が,おそらく間隔をおおむね正確に縮尺したと思われる形で並べられているのだ。

 上の写真がその歩道の様子である。太陽系のモニュメントは左側に並んでいるが,この写真では見えない。右側にあるのはつくば市の図書館。
 もう少しせまってみると以下のようになる。

太陽から火星までが5つの正方形のモニュメントになっている。いちばん手前が太陽で,奥が火星。木星から先はかなり離れていて,この写真では見えない。
 さて,冥王星まではかなり距離がある。最初の写真の坂を下りきったあたり(と言ってもよく見えないが)である。

この冥王星がいったいどうなるのか,気になるところだ。
19:13:03 - yhatanaka - No comments - TrackBacks