院試塾ブログ
インターネット大学院予備校代表・畑中泰道のブログ

21 October

派生副詞の解釈—factuallyの意味は?

 抽象的な学術英語などを読む際,副詞の解釈は意外に問題となる。たとえば,ごく簡単な文であるが,He was factually wrong.はどう解釈するか。『ジーニアス英和辞典』でfactuallyを引くと,「事実上」という訳語しか挙がっていない。これをそのまま受け入れて「彼は事実上間違っていた」としても,この英文をわかったことにはまったくならない。
 このような派生副詞は対応する形容詞に戻して考えるのがひとつの方法だ。辞書によっては,factuallyの項自体には訳語を載せず,形容詞factualを参照するようにしてあるものもある。『ジーニアス』でfactualを引くと,「事実の;事実に基づく[を含む]」とある。しかし,wrongとの関係で考え始めると,この訳語ではまだピンとこないのではなかろうか。
 こんな時には英英辞典の出番だ。COBUILDでfactualを引いてみると,Something that is factual is concerned with facts or contains facts, rather than giving theories or personal interpretations.と説明してあり,The editorial contained several factual errors.という用例が挙がっている。このfactual errorsは「事実に照らして間違っていること」などととらえればよい。最初に挙げたfactually wrongも「事実に照らして間違っている」とすればよいだろう。
 この英英辞典の定義を見て1つ気づいてほしいことがある。それは,ごく単純なことではあるが,factuallyが名詞factに対応する副詞形である点だ。もちろん,英和辞典の訳語からも,読み取ろうとすればこれが読み取れないことはない。しかし,英和辞典の訳語をそのまま使おうとする人は多い。なお,本当は,英和辞典の訳語はあくまで語の意味を提示する材料に過ぎないのであって,そこから相当の「読み取り」をへて,文脈に即して適切な訳にたどりつく必要がある。この点もしっかり確認しておきたい。
 話をfact / factuallyの関係に戻す。英文法の基本だが,前置詞+名詞は形容詞ないしは副詞に対応する。この点をふまえていれば,factuallyは[前置詞]+fact(前置詞には群前置詞など対応する表現を含む)に対応するととらえることができる。上の英英辞典の定義を応用すると,factuallyの1つの解釈はconcerning factsである,と言える。LDOCEの定義を応用すると,さらにbased on facts / relating to factsなどの意味が考えられるし,さらに他の英英辞典も見ると,using facts / containing factsなどとも考えられることがわかる。
 このように柔軟な考えかたを身につければ,observationally and experientially based study of nature (British National Corpus)といった表現に出会っても,「観察と経験にもとづいて自然を研究すること」とすんなりとらえることができるし,a series of conceptually coherent books (adapted from British National Corpus)も「概念の点で一貫している一連の本」と解釈できる。
 本当にきちんとした読みかたを身につければ,英文の内容はそれこそ「手に取るように」わかるものだ。

【関連URL】
・「学術英語の読解」
 http://homepage1.nifty.com/inshi/e_read.htm
10:32:00 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

15 October

辞書の引きかた—用例まで見る

 辞書を引くという作業は,単に未知の語などの「訳語」を調べるだけではない。その単純作業から脱却し,辞書を積極的に活用する方法を身につけなければ,辞書を味方にしながら英語と「格闘」することはおぼつかない。
 この過程を,実際の英文を材料に追体験してみてほしい。

Modern medical science creates new moral choices, and challenges traditional views that we have of ourselves. Cloning has inspired many films and much concern. The possibility of making creatures that are part human and part from other animal is not far off. (Tony Hope (2004) Medical Ethics: A Very Short Introduction. p.1)

 下線部のinspireをどう解釈すればよいだろうか。『ジーニアス英和辞典』でinspireを引いてみると,2bに「<事が>(原因となって)<事>を引き起こす,生じさせる,もたらす」とある。この訳語をそのまま使おうとすると,相当硬直した訳になってしまうだろう。「<事が>」という記述から,無生物主語構文で用いられることがわかる。そのまま訳さないほうがよいのではないか,と考えておくべきだろう。訳しかたの参考とするためにも,用例を見ておく必要がある。
 ということで用例を見ると,The decision must have been inspired by a need to expand overseas markets.という例が挙がっており,「海外に販路を広げようとする必要によってその決断が下されたにちがいない」という訳がついている。一見byを「によって」と訳しているように思えるが,これは原因を表すと考えたほうがよいだろう。ただ,残念ながらうまく訳すうえではあまり参考にならないかもしれない。
 特に問題となるのがinspireとmany filmsとの関係だ。「クローン技術が多くの映画を作り出す」では何が何だかわからない。『プログレッシブ英和中辞典』には「…がヒントとなって…する」というのがあり,用例はないがこの訳語は参考になりそうだ。
 英英辞典も見てみよう。COBUILDにはIf a book, work of art, or action is inspired by something, that thing is the source of the idea for it.という語義があり,用例はThe book was inspired by a real person, namely Tamara de Treaux.となっている。「その本は実在の人物を描いたものだ」といった具合に訳すと適切なのではないか。
 以上を総合すると,引用文の下線部は「クローン技術は多くの映画の題材となっているが,不安を感じる人も多い」といったあたりに訳せるだろう。語義と語法表示,さらには用例をしっかり見てはじめて,このようにすっきりした理解に到達することができるのだ。
19:00:10 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

11 October

「形」から入るのも思考の方法の1つ

 考えることは時につらく苦しい。特に,アイディアを出さなければいけないのに出てこない,というのはしんどい。しかし,だからといってただ悩んだりうんうん唸ったりしていても,何かよいアイディアが出てくるわけではない。
 そんな時には,形から入るとうまくいくことがある。ごく簡単に言うなら,以下のような図を書いてみるのだ。

それぞれの図形に適切な内容を入れようと考える。この図はいわゆる5W1Hの形をとっているが,何もこれに限定する必要はない。たとえば参考になるものをまず図解し,それと同じような図解になるように考えることもできる。とにかく大切なのは,ただ漠然と考えるのではなく,何を考えなければならないかをまずは明確にし,ある程度の形を与えることだ。それによって,より深く具体的に考えを進めることができるのである。
17:22:06 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

03 October

「辞書を引く」を英語で言うと?

 「辞書を引く」は英語で何と言うか。look upと覚えている人が多いのではないかと思うが,実は注意が必要だ。look upそのものは「探し出す」という意味なので,目的語は探し出す対象,つまり語などになる。『ジーニアス和英辞典』を見ると「辞書で単語を引く」はlook up a word in a [the] dictionaryとなっている。
 consultと覚えている人もいるかもしれない。consultは「助言を求める」が基本的意味だから,助言を求める相手,つまり辞書が目的語となって,consult a dictionaryが基本となる。『プログレッシブ和英辞典』の「辞書を引く」の用例はconsult [refer to / look up a word in] a dictionaryとなっていて,refer to a dictionaryという言い方もできることがわかる。
 ついでに「〜は辞書に載っている」は何と言うかも確認しておこう。実は簡単で,〜 is in the dictionaryと言えばよい。辞書を主語にするならgive / carry / listなどを使って,たとえばThe dictionary gives / carries the word.とすればよい。あるいはfindを使って,You can find the word in the dictionary.としてもよい。
21:48:49 - yhatanaka - 2 comments - TrackBacks

untilを「読み解く」

 untilという語を辞書で引いたことはあるだろうか。ない,という人が圧倒的に多いと思う。しかし,高校英語で学習するuntilとby (the time)の違い以外にも,時に注意を要する語だ。
 untilを「そしてついに〜」と前から訳すのが適切な場合がある。She ran and ran, until she came to a small town.(『ジーニアス英和辞典』)などがそうだ。『ジーニアス』の語義の注記を見ても,「[untilの前にコンマを置いて;前から訳して] (…して)ついに」とある。
 そもそもuntilの基本的意味はどのようなものなのだろうか。以下のように図解してみるとよいと思う。

黒の縦線がuntilで表される時,赤い部分がその時まで継続する事柄を表す。もう1つ重要なのは,黒の縦線を境にして状況が一変し,それ以降は別の状況が生じる点だ。これを青の線で表現してある。If something happens until a particular time, it happens during the period before that time and stops at that time.というCOBUILDの語義を見ても,このことがわかるだろう。
 「〜までずっと」と解釈する場合は黒線の部分を基準として状況全体を見ているのに対して,「そしてついに〜」と解釈する場合は赤い部分と黒線を順に眺めている,と考えればよい。
 この図解から出発すると,not ... until ~という表現が,なぜ「〜してはじめて…」という意味になるのかもわかる。He did not turn up until the meal was over.「彼は食事が終わってからやっと現れた」(『ロイヤル英文法』)といった文がこの例だが,これは以下のように図解するとわかりやすい。×がnotの意味を表している。

赤い部分が否定され,黒線の部分で変化が生じる点が際だつ,と考えればよい。
 なお,It was not until the meal was over that he turned up.という形のほうを覚えている人も多いだろうが,これは上の文を強調構文にしたものだ。
 辞書にはいろんな発見がある。知っているように思える語でも,少しでも疑問を感じたら辞書を引く習慣をつけてほしい。
21:30:04 - yhatanaka - No comments - TrackBacks