院試塾ブログ
インターネット大学院予備校代表・畑中泰道のブログ

14 March

拡張子とextension

 コンピュータ用語に「拡張子」というのがある。ファイル名「MyExcelFile.xls」のピリオドから後の3~4文字を指す。Windowswでは主にアプリケーションとの関連づけに用いられており,「.xls」はこのファイルがExcelブックであることを表す。なぜこれを「拡張子」と言うのか謎解きをしてみよう。
 まずこの日本語の用語は「拡張+子」と分析することができる。『広辞苑』で「子」を引くと,7番目に「動作性の名詞に付けて,そのことを行う人またはものを表す」という語義があり,用例として「読書子・編集子・演算子」が挙がっている。岩波文庫の巻末に「読書子に寄す」という一文があるのを見たことはないだろうか。また,「演算子」は数学やコンピュータ科学,論理学などで一般的に用いられる用語だ。これは英語のoperatorに対応するが,この語はoperate+orという構成になっていて,この-orは「〜する人・もの」という意味の接尾辞だから,「子=-or」時賃と対応している。
 ここから考えて,「拡張子」は「拡張する(はたらきをする)もの」という意味であることがわかる。この「拡張子」に対応する英語はextension(file(name) extension)ということもある)で,もとの動詞extendにはたしかに「拡張する」という意味がある。ここで問題となるのは,何を「拡張する」のかだ。
 簡単に言うなら,ファイル名を「伸ばす」ものだからextensionという,と考えてよい。しかし,その背景にはもう少し複雑な事情があるのではないかと推察する。この用語はおそらく電話の「内線番号」と関係があると思われる。
 図解で説明しよう。まず,extensionの「伸びた部分」という意味は以下のように図解できる。LDOCEのthe process of making a road, building etc bigger or longer, or the part that is addedという語義の太字の部分である。

 ここから派生して,電話の「内線」という意味が出てくる。LDOCEではone of many telephone lines connected to a central system in a large building, which all have different numbersとなっている。これを以下のように図解してみよう。

 これではまだ「拡張子」にはたどりつけないが,さらにextensionと「内線番号」を関連づけてみると,以下のように図解できる。代表番号をextendしたもの,というイメージだ。

 ここまで来れば,コンピュータ用語の「拡張子」が以下のように図解できることはもうおわかりだろう。
10:29:59 - yhatanaka - 2 comments - TrackBacks

11 March

pasteurizeとパスツール

 トリビアを1つ。牛乳などの低温殺菌のことを「パスチャライズ」と言い,英語ではpasteurizeと書くが,この語はかの有名なパスツール(Pasteur)に由来する。なお,派生語としてunpasteurized「低温殺菌していない」というのもある。
22:56:24 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

Guinnessな英語

 趣味と実益を兼ねて,お酒に関する文章を英語で読むことがある。今はさらにブランディング/マーケティングの勉強も兼ね,Guinnessに関する本Guinness Is Guinness: The Colourful Story of a Black and White Blandを読んでいる。
 もちろん内容も興味深いのだが,今回は少し違う話を書く。「辞書ってすごい」という話だ。まずはGuinness Is Guinnessからの引用。

You know all about the widget, don't you? The British recently voted it the greatest invention in the past 40 years. More important than the Internet. And email. And why not? The Internet is just an electronic noticeboard, and email is for people who've forgotten how to write. Whereas the widget is your permission to drink at home, your route to relaxation, your passport to freedom. (Actually, it's a small plastic device in the bottom of the can that introduces nitrogen into the beer to create a pint just like the one you get down the pub.) (p.18)

widgetを『ジーニアス英和大辞典』で引くときちんとここでの意味も載っていて,「缶ビールを開けるとピールの中に窒素ガスを注入して泡を発生させるしくみ」とある。上の引用文の最後のカッコ書き部分を見ても,おおむね同じ趣旨のことが書いてある。
 ついでにOxford Dictionary of Englishを見てみると,(in some beer cans) a plastic device which introduces nitrogen into the beer, giving it a creamy head in imitation of draught beerとある。この記述のin imitation of draught beerと,先の引用のthe widget is your permission to drink at homeとを関連づけると,このwidgetのすごさもよりわかってくる。あわせて,ビールの泡の部分をheadと言うこともわかる。
 さらに,GuinnessをBritannica Concise Encyclopediaで引いてみるとおもしろいことがわかる。Guinness PLCの項に,なんとIn 1955, to help settle trivia disputes in pubs, it began publishing The Guinness Book of Records, which has become perhaps the best-selling book (annually) in the world.という記述がある。ぼくは実は知らなかったのだが,ギネスブックのギネスはあのギネスと同じだったのだ!!
 最後にもう1つ。最近,瓶入りのギネス(専用のもの)を機械にかけて泡を立てて出す店が増えている。この機械をsurgerと言うのだが,このもとの動詞surgeには「どっとわき上がる」といった意味があり,液中から泡がどんどん生じて立ち上っていく様子を的確にとらえる言葉だ。残念ながら英和辞典などにこの意味がずばり載っているわけではないが,動詞surgeの基本的意味を考えると,あの機械がsurgerと呼ばれるのは納得できる。20歳以上の読者には,ぜひ一度実際にsurgerが動作している場面を見てみてほしい。
20:32:09 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

06 March

英語の発音—鼻音

 日本人が苦手な英語の発音の1つにng音がある。こう言うと意外に思われるかもしれないが,ngを正確に発音できる人は少ないのではないか。なお,対応数発音記号が特殊文字であるため便宜的にngと表記するが,これで1つの音である。
 まず,鼻音の発音を若干理論的に理解しておこう。破裂音(域の通り道をいったん遮断してそれを解放することによって出す音)との対応関係を確認するとよい。以下のようになる。
  p / b … m
  t / d … n
  k / g … ng
 鼻音は息が続くかぎり続けて出すことができるから,正しく発音できているかどうかを確かめる1つの方法として,たとえばp / bの口の構えで鼻から息を抜いて音を出し続けてみるとよい。これがうまくできたら,同じようにk / gの口の構えで鼻音のngを続けて出してみる。
 ぼくがng音のお手本として示すことが多いのが,The CarpentersのSingである。歌い出しはSing, sing a song ...だ。最初のSingの最後に「グ」は聞こえない。sing aのところも,鼻から抜けない「ガ」の音ではなく,(カナではうまく表記できないが)「ンガ」に近い。これも,sina / sima / singaと3つやってみるとよいだろう。
 もちろん,理屈ばかりでは「畳の上の水練」になりかねないが,少しの理論を加えることで,発音はしやすくなる。
15:53:50 - yhatanaka - No comments - TrackBacks