院試塾ブログ
インターネット大学院予備校代表・畑中泰道のブログ

20 January

名詞化の読みほどきを実践する

 名詞化の読みほどきは単なる翻訳のための便法だと思われているのかもしれないが,高度な英文を「心に響く」「ピンと来る」ように読解するには欠かせないものである。すでに何度か書いているが,大切なことなのでもう一度書いておきたい。以下の例文を見てほしい。

There are very few documented cases of musical hallucinations in younger children—though it is not clear whether this represents [1]the actual rarity of such hallucinations in children or [2]their unwillingness or inability to speak of them. (Oliver Sacks (2007) Musicophilia: Tales of Music and the Brain. p. 68)

[1]はrarityをもとの形容詞rareに戻す。もとが形容詞である名詞化に続くofの句は,もとの形容詞が従えるofの句が継承されたものである場合の他,もとの形容詞の主語を表す場合もあり,この場合はこれに該当するから,「子どもがそのような幻覚を感じることが実際に少ないこと」と解釈できる。[2]ではunwillingness / inabilityが並列されており,前後のtheirやto speak ...はこの2つに共通している。所有格はもとの形容詞の主語に対応し,to不定詞句はunwilling / unableに続くものが継承されている。「子どもが幻覚について話したがらなかったり,話すことができなかったりすること」と解釈すればよい。
 「直訳的な」理解との違いを十分に感じとってほしい。
17:22:32 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

10 January

高校生の電子辞書—1月25日まで待とう

 高校生向けの電子辞書を買おうと考えている人は,1月25日まで待ったほうがよいと思う。この日はCASIOのXD-SP4800の発売日だ。広辞苑の最新版である第六版を搭載していることが最大の目玉のようだが,英語学習の観点から言うと,LongmanとOxfordの学習用英英辞典がダブルで収録されるという情報のほうが気になる。電子辞書にはまだ十分に浸透していない『ジーニアス英和辞典』の第4版も入っている。
16:07:05 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

PowerPointの使い方

 PowerPointの正しい使い方とはどのようなものだろうか。先日知り合いの編集者と話していて,ふとそんな話題になった。その人によると,PowerPointを一般的に使うようになってから,企画会議などのあり方が変わってきたというのだ。
 ぼく自身,これまで大学や専門学校でコンピュータの使い方を教えてきて,そのなかでPowerPointについても教える機会があった。その時に特に強調しているのは,「文章は書くな」というものだ。
 そもそもの問題は,PowerPoint自体が箇条書きを主体としたスライド作成を基本に作られている,という点だと思う。標準的なスライド形式は箇条書きテキストになっているし,アウトライン機能を使ってスライドショーを作成しようとするとどうしても箇条書き主体になる。
 それでも,箇条書きが1行に収まっているうちはまだよい(箇条書きを使うなら1行で,ともぼくは指導している)。しかし実際には,数行にわたる文章を書いてある場合もある。ひどいのになると,1枚に1つの文章を書いてある。
 何がいけないのか。ぼくの考えでは,こうした使い方はプレゼンテーションにおけるスライドショーという「メディア」の特性がわかっていないのが問題である。スライドの内容をそのまま読み上げるのであれば,スライドショーを別に用意する必要はない。文章を中心に構成するのであれば,ワードプロセッサで印刷用の資料をきちんと作成したほうが,聞き手にとってはよほど親切だろう。口頭発表そのもの,その際に映写する資料,印刷して配付する資料には,それぞれに適切な形があるはずだ。もちろん,いろんな制約があってそのまますべての場合に当てはまるともかぎらないが,これが基本線ではないだろうか。
 それではどんなスライドを作ればよいのか。基本的な考え方については「図解ワールド」を参照してほしい。
15:58:36 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

04 January

語義解釈と構文理解の相互関連

 語義の解釈と構文理解は相互に関係している。だから単語の訳語だけを覚えて,それを構文解析に当てはめて英文を解釈しようとしてもできない。これまでにも何度か書いてきたが,1つ例を挙げて確認してみよう。Capgras delusions are characterized by a person believing that people are not who they appear to be. (Malcolm MacLachlan (2004) Embodiment: Clinical, critical and cultural perspectives on health and illness. Open University Press, p. 70)のcharacterizeに注目してほしい。院試塾の課題にも出てくる語で,辞書から「特徴づける」という訳語をそのまま引いてくる受講生が多いのだが,A characterizes Bで「AはBの特徴である」と考えたほうがわかりやすい。この文ではB is characterized by Aと受動態になっているから,「Bの特徴はAである」と考えればよい(なお,研究社の『新英和大辞典』には「…の特徴[特色,特性]になっている」という,より適切な訳語が挙がっているし,小学館『ランダムハウス英和大辞典』にも同様の訳語が載っている)。
 さてこの「特徴づける」と「特徴である」との違いだが,単なる訳語の違いにとどまらない。なぜなら,この違いによってbyに続く句の解釈も変わってくる可能性があるからだ。「特徴づける」と主語に主体性を認めやすい訳語を当てはめると,a personにbelieving ...という現在分詞の句がかかっていると解釈し,「カプグラ妄想は…人によって特徴づけられる」と読んでしまう可能性がある(もっとも,この解釈もよく考えてみればやはりおかしいのだが,訳語の当てはめで満足する人はこうした再確認はあまりしない)。正しい解釈は,a personが意味上の主語,believing ...が動名詞句というもので,「カプグラ妄想の特徴は,(人が)…であると信じることである」と読まなければならない。
 とりあえずはこう言えるが,何も高度なことではない。学習用英和辞典である『ジーニアス』でも,用例をきちんと見ればすむことである。「特徴づける」の用例を見ると,An elephant is characterized by its long trunk.とあり,「象は鼻の長いのが特徴だ」と訳してある。この用例と訳文をしっかり検討すると,by以下の名詞化をほどいて解釈するとわかりやすくなることにも気づくはずだ。辞書のポテンシャルをどれだけ引き出せるかは,引く人にもよるのである。
17:12:06 - yhatanaka - No comments - TrackBacks