院試塾ブログ
インターネット大学院予備校代表・畑中泰道のブログ

30 March

学問へのパスポート―Very Short Introductions

 学問に必要な基礎知識と外国語読解力を同時に身につけることができれば,本格的な学問研究の入口としてとてもよい。こんなニーズを満たしてくれるのが,Oxford University PressのVery Short Introductionsシリーズである。Webサイトによれば現在173冊が刊行されており,カバーしている分野も広い。
 このシリーズは学問研究のパスポートであると言ってよいだろう。特に評価できるのが,(すべてを調べたわけではないが)文献解題ないしは参考文献の紹介がきちんとある点だ。つまり,このシリーズの1冊から,その分野にさらに深く入り込んでいくことができるのである。もちろん,大学院入試の準備として読むこともできるが,やる気とある程度の英語力があれば大学受験生でも読めるだろう(実際,予備校で教えている生徒にもすすめている)。
 英語もそう難しいわけではない。このくらいのものが辞書を引きながらでも読みこなせなければ,専門的な文献を読むことなどおぼつかないだろう。原書に比べてかなり少ないが岩波書店から翻訳が出ている(<1冊でわかる>シリーズ)ので,ものによっては翻訳と見比べながら読み進めることが可能である。とりあえず1冊目はこの方法で読むのもよいかもしれない。
 院試塾では,「心理英語スタートダッシュゼミ」という講座で,Psychology: A Very Short Introductionを教材として使っている。ぼくがこの講座の着想をえたのは,実はVery Short Introductionからではなく,自分がフランス語学習もかねて読んでいたQue sais-je?シリーズからだった。1冊を読み切るまではたいへんな思いをしたが,1冊読むと自信もつき,2冊目以降は比較的楽になってくる。皆さんにもこうした実感を持ってもらえればと思う。
17:55:57 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

29 March

語句の意味を文脈から見きわめる―あわせて使われている語句に注目

 語句の意味を理解する際に文脈が重要であることは,すでに何度も説明してきた。今回は特に,あわせて使われている語句との関連から意味を見きわめる手法を説明しよう。

What we have tried to do in the last few paragraphs is to show how political philosophy can illuminate the way we think about politics without making claims to a special kind of truth that is inaccessible to the ordinary person. There is a related issue here, which is how far the kind of truth political philosophy gives us is [A]universal truth―truth [B]that applies to all societies and in all periods of history. Or is the best we can hope for [C]local knowledge, knowledge [D]that is relevant to the [E]particular kind of society we live in today? (David Miller (2003) Political Philosophy: A Very Short Introduction. Oxford University Press. p.15)

まずはAとB,CとDがそれぞれ言い換えになっている点に注目しよう。A / Cがそれぞれ関係節で言い換えられている。Aは「普遍的な」「すべてに及ぶ」という意味で特に問題ないが,CはDとの関連で理解しないとわかりにくい。Dと関連づければ,Cのlocalは「対象範囲が限定されている」という程度の意味だと理解できるだろう。また,Aのuniversalとの対比関係にも注目するとよい。
 また,Eのparticularは「特別な」「特殊な」ですませてしまいがちだが,この文脈でこの意味は不適切である。BとDとの対比関係に注目してみると(AとCの対比関係から当然注目すべきものだ),このparticularはallと反対の意味で用いられていると判断できる。これをふまえて辞書を見れば,「特にこの」(『ジーニアス』)といった訳語が見つかるし,英英辞典のYou use particular to emphasize that you are talking about one thing or one kind of thing rather than other similar ones.(COBUILD)という語義を見れば,「〜だけ」といった柔軟な解釈も可能になる。
15:57:15 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

26 March

フランス語とのつきあい

 フランス語を学び始めたのは高校2年の時だ。きっかけは,東後勝明先生のNHKラジオ『英語会話』でフランス旅行の話が出てきて,その時にフランス語の発音がおもしろそうだと感じたこと。林田遼右先生のNHKラジオ『フランス語講座』と加藤晴久先生のNHKテレビ『フランス語講座』で学び始めた。辞書は『クラウン仏和辞典』を買った。
 その後もラジオ・テレビの講座や独習書で勉強を続けた。高校3年の受験時期も,フランス語の勉強は止めなかった。大学でも第2外国語はフランス語。この時,林田先生といっしょにラジオ講座を担当していたトルード先生に直接教わることになった。
 大学では英語学を専攻しようと決めていたが,いざ大学に入ってみると,フランス語学もいいなと思うようになった。実のところ,授業1週目は英語学専攻に進むための必須科目「英文法概説」ではなく,フランス語学の基礎科目に出てみた。しかし,冷静に考えてみると,フランス語をある程度ものにしてさらに研究まで進めるかというと今ひとつ自信が持てず,結局は英語学に進むことにした。
 大学3,4年ではフランス語学の専門科目も履修した。『星の王子さま』をフランス語で読んだのもこの時だ。大学院入試で第2外国語が課されることもあったが,フランス語に対する興味が薄れていなかったからだ。大学院進学の時にも,フランス語学に転向しようかという思いがあったが,結局はそのまま英語学に進んだ。大学院でもフランス語学の講座をとった。言語学の文献ならある程度楽に読めるようになった。
 その後研究の道から予備校に方向転換して,しばらくはフランス語から遠ざかった。そしてここ数年,いろいろな理由からまたフランス語を学んでいる。なかなか勘は取り戻せないが,本を1冊読み切れるところまでは復活した。
 フランス語を学んでいると,英語で苦労している人の気持ちがある程度は理解できるように思う。本を読むにも辞書は手放せないし,文法が十分にわからないこともある。しかし,単語を単語集で覚えようとしたことはないし,そういうことをしようとも思わない。ひたすら未知の単語を調べ,忘れたらもう一度調べる。これで必要な単語は身につくはずだ。文法事項も必要に応じて『新フランス広文典』で調べる。例文を参照しながら解説を熟読し,文章で実際に出会った1つ1つの項目をものにしていく。外国語を学ぶとは結局こういうことなのだとつくづく感じている。
16:16:48 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

23 March

基本語法知識の応用―think of A as Bから考える

 think of A as B「AをBだと考える」を知っている人は多いだろう(ついでながら,「AをBとみなす」とするのは避けたほうがよい場合が多い)。しかし,この基本語法が他の語と結びつくと,途端に理解度が下がる。まずは以下の例を見てほしい。

 A well-known scientist (some say it was Bertrand Russell) once gave a public lecture on astronomy. He described how the earth orbits around the sun and how the sun, in turn, orbits around the center of a vast collection of stars called our galaxy. At the end of the lecture, a little old lady at the back of the room got up and said: "What you have told us is rubbish. The world is really a flat plate supported on the back of a giant tortoise." The scientist gave a superior smile before replying, "What is the tortoise standing on?" "You're very clever, young man, very clever," said the old lady. "But it's turtles all the way down!"
 Most people would find the picture of our universe as an infinite tower of tortoises rather ridiculous, but why do we know better? (Stephen Hawking (1988) A Brief History of Time. Bantam Books. p.1)

下線部をどのように理解すればよいだろうか。まずは英和辞典で名詞pictureを引いてみよう。『ジーニアス英和辞典』には「心に映る[描く]もの,イメージ;理解,合点」という語義があるが,picture of A as Bという語法表示や用例はない。より大きな辞書を見てもあまり手がかりはない。しかし,of A as Bに注目してthink of A as Bを思い出すことができれば,下線部は「宇宙が無限に重なるカメの塔であると考えること」と理解することができる。これを「無限に重なるカメの塔としての宇宙の図式」などとしたのでは,わかっていることにならない。
 このような理解のしかたが身についていれば,下のような例も問題なく理解できるだろう。

Beginning with Copernicus in the middle sixteenth century, the issue was formally joined. The picture of the Sun rather than the Earth at the center of the Universe was understood to be dangerous. (Carl Sagan (1994) Pale Blue Dot: A Vision of the Human Future in Space. Ballantine Books. p.14)

下線部は「地球ではなく太陽が宇宙の中心だと考えること」とすればよい。of A as Bという形にはなっていないが,これはat the center of the Universeが前置詞句であるため,asによる支えを必要としないからだ。なお,rather than ~はこのような場合「〜ではなく」と否定に解釈するのがよい。辞書の用例にもこのように訳しているものがある。
 最後に,院試塾の「心理英語実践講座」の課題からも例を挙げておこう。

From a very young age, we develop what is known as a theory of mind―an awareness of other people as thinking, feeling individuals―which we use to interact effectively with other people.

これは「他人も考えたり感じたりする個人であるという意識」とすればよい。
 暗記ではなく,このように応用のきく語法知識を身につけたいものである。
15:59:20 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

20 March

構造解釈と文脈

 英文読解の初心者から脱却するには,文脈を理解にどう反映させるかを習得しなければならない。しかし一般には,語→句→節→文→段落→文章と,ボトムアップで考えることからなかなか抜け出せない場合が多い。たしかに,このように「積み上げ式」に理解することは一見着実であるようにも見えるが,実際には文脈から細部が理解できる場合も多いのである。文脈から構造のあいまい性が解決できる例を見てみよう。

It is with some trepidation that I introduce a final term into the discussion: that of genius. I reserve this honorific label for those persons who not only are expert and creative but whose works also assume a [1]universal or quasi-universal significance. Within the scientific domains, it is individuals of genius, such as Isaac Newton and Charles Darwin, who discover principles of [2]universal significance. And within the artistic domains, it is individuals of genius who create works [A]that speaks to individuals from diverse cultures and eras. I would speculate that those works endure because [3]they capture some kind of truth about the human condition, often not in words. We are comfortable applying the epithet genius to Shakespeare, Goethe, Rembrandt, and Mozart because [4]their works have transcended their own era. Presumably individuals [B]from other cultures and eras also merit the term genius, but that determination must be left to those with the requisite knowledge and judgment. (Howard Gardner (2006) Multiple Intelligences: New Horizons. p.42 (italics in the original))

下線部[A]のfrom diverse cultures and erasが,一見したところspeakを修飾するのかindividualsを修飾するのかあいまいに感じられるかもしれない。これまでの指導経験から言うと,前置詞は副詞的に解釈する傾向が,特に初級・中級の学習者に顕著に見られる。このあいまい性はどのように解決すればよいだろうか。
 ボールドになっている部分に注目してほしい。[1][2]ともuniversalという語を含んでいる。また,[1]が科学者と芸術家についての総論的記述で,[2]が科学者についてのより踏み込んだ記述となっている。この[2}に対応して,芸術家について説明しているのが下線部[A]である。となると,普遍的な魅力を持つ作品を作り出した芸術家に関する記述であると考えられるから,from ...の前置詞句はindividualsにかかると判断しなければならない。また,[3]には人間の置かれた条件についての真理とあるから,これもやはり普遍的なものであるという意味合いをもつ。さらに[4]で時代を超越すると述べているのも関連づけて解釈すればよい。
 あわせて,下線部[B]も見ておきたい。このfrom ...の句は下線部[A]と共通の語を含んでいる。しかも,これは構造の点から見て直前のindividualsにかかる解釈しかない。
 下線部[A]のfrom ...の句のかかりかたに関するあいまい性は,この部分だけを見ていても解決できない。つまり,ボトムアップではうまくいかないのである。ボトムアップで読むというアプローチは,局所的な見かただけをすればよいという点ではたしかに魅力的である。しかし残念ながら,それだけでは正確な読みは保証されないのだ。このアプローチに安住している学習者は,自分の今のレベルを超えることは難しいだろう。しかし,この安易な方法についすがってしまう人が多いのもまた事実である。
 何のために英語を学んでいるのか,もう一度考えてみてほしい。学問研究の手段として使おうというのであれば,日本語なみに理解できなければダメなのだ。安易な方法に逃げ込んではならない。
20:24:54 - yhatanaka - No comments - TrackBacks