院試塾ブログ
インターネット大学院予備校代表・畑中泰道のブログ

23 March

伸縮式ボールペン

 メモをとるために常に筆記具を持ち歩いているので,こうしたものに対して当然ながら興味を持っている。なかでもとりわけ,普段はコンパクトで使うときには伸びる伸縮式ボールペンには特に関心があって,手元にも何種類かある。
 ぼくがいちばんの傑作だと思うのはLAMYpicoだ。ノックすることでペン先が出ると同時に全体が伸び,もう一度ノックするとペン先が収納されて縮む。ポケットに入れることを想定しているためかクリップはないが,代わりに転がり防止の突起(ロゴマークが入っている)がついている。カラーバリエーションも楽しい。日本国内で販売されているものにはないが,Lextyleで販売されている直輸入品には本革ケースがついている。すばやく取り出して使うという点からはケースはじゃまかもしれないけれど。
 これに続くのはプラチナ万年筆の「ポケット」だ。3種類あるが,特に秀逸なのがBSL-1000Sで,これは軸を引っ張って伸ばすとペン先が出て,縮めるとペン先が収納されるようになっている。伸ばした状態ではそれなりの長さが確保できて筆記しやすい。軸が比較的細いため,メモカバーのペンホルダーにつけるものとしても使える。なお,油性ボールペンの他にシャープペンシルもある。
 「ポケット」よりも一回り大きくなるが同様の機構を採用しているものにRotringの「エスプリ・ムーブ」だ。軸が太いためメモにつけて使うことはできないが,たとえば胸ポケットが浅いときなどには伸縮するのが都合がよいこともある。同系列にはシャープペンシルの他万年筆もある。ただ,万年筆の場合には長さが変わること以外,伸縮式にするメリットはあまりないように感じられる。
 Rotringは製図用品に特化するとのことで,一般筆記具事業からは撤退している。一部の製品はParkerに移管されている。「エスプリ・ムーブ」もEspritシリーズとして販売されている。ボールペン,万年筆,シャープペンシルに加えて,ボールペンとPDAスタイラスを組み合わせたマルチファンクションペンもある。ぼくはRotringとParkerの両方の製品を持っているが,クリップの形状がRotringのもののほうがよい。Parkerのトレードマークである矢羽根をかたどったクリップが,シャツに引っかかることがあるからだ。
 picoを製造しているLAMYは他にもいろいろ個性的な商品を出している。特におもしろいのがピックアップ・マネージャだ。回転式の油性ボールペンの軸に蛍光マーカーがセットされており,ボタンを押すとマーカーが飛び出すしかけになっている。また,swifttipoも使っていて楽しくしかも実用的な商品である。
 LAMYの代表作と言えばやはりsafariだろう。正しく持てるようにグリップ部分が三角形になっているのと大きなクリップが特徴だ。これは毎年限定カラーが発売される。2009年はオレンジで,万年筆と油性ボールペンがある。
 書くことが楽しくなる筆記用具たち。知的生産の強い味方でもある。
08:48:23 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

22 March

他人の人妻

 ぼくのところに届いた迷惑メールに「他人の人妻」という表現が含まれていた。いわゆる「重言」である。重言とは,同意の語を重ねて用いているがそれによって新しい情報が加わらない表現のことで,おそらくもっとも有名なのは「頭痛が痛い」ではないだろうか。昔のCMで「ピーコ,頭痛が痛いの」というのがあった。「頭が痛い」が正しいとされる。「他人の人妻」も,そもそも人妻は他人の妻であるわけだから,「他人の」は余計である。それに,「自分の人妻」というのは矛盾した表現だ。
 他の重言の例をいくつか挙げておく。「馬から落馬する」「危険が危ない」「電車に乗車する」などがあるだろう。「違和感を感じる」に関する議論が『続弾!問題な日本語』(大修館書店)にあるが,このあたりになってくると慣用との関連で微妙な問題も出てきて,一概に間違いとも言い切れない。
 『広辞苑』におもしろいことが載っていた。「エンドウマメ」も重言なのだそうだ。たしかに漢字で書くと「豌豆豆」で「豆」の字が重なる。やはり『広辞苑』で「豌豆」を引くと,「古く豆類を中国に輸出していた大苑(だいえん)国(現在,ウズベキスタンのフェルガナ州)にこじつけたものか」という注記がある。特に「エンドウ」と表記してしまうと「豆」の字が入っているのがわからないから「エンドウマメ」と言うのではないだろうか。
 エンドウと言えばメンデルの法則だが,筑波実験植物園には「メンデルのブドウ」なるものがある。修道院でワイン用のブドウの品種改良に取り組んでいたらしい。
 それにしても,迷惑メールというのはなかなかおもしろい(もちろん,だからといって迷惑でないということにはならないが)。以前,『下妻物語』という映画が流行っていたころ,早速「ひとづま物語」(たしかひらがなだったと思う)というのが来た。そのセンスは別のところに活かせないのか?
 こんなタイトルの記事を書くと,またコメントスパムが増えるのかもしれない…。
18:59:35 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

内容理解→文法構造の把握

 英文をただ機械的に理解できないことは,これまでにも何度か書いてきた。今回は,内容が理解できなければ文法構造を正確に把握できない例をとりあげて考えることにしよう。

And as we all have learned more and more over the last couple of decades, too much sun can be a bad thing on a global level and an individual one, throwing our environment into chaos by causing drought or causing deadly skin cancer. (Sharon Moalem (2007) Survival of the Sickest. p.49)

 ごく単純に考えた場合,下線部の構造の解釈は2通りある。1つは[共通]throwing our environment into chaos by [A]causing drought or [B]causing deadly skin cancerというもので,前置詞byの目的語となる動名詞句が並列されているという解釈。もう1つは[A]throwing our environment into chaos bycausing drought or [B]causing deadly skin cancerで,分詞構文が2つ並列されているという解釈だ。2つの解釈のどちらも文法的には問題のないものだ(ただ,一般的傾向として前者の解釈の場合前置詞byが反復される可能性が高いことは考慮してよいかもしれない)。
 どちらの解釈が適切であるか,残念ながら文法的には決着がつかない。それではあいまいなまますませなければならないかというと,そうでもない。先行するtoo much sun can be a bad thing on a global level and an individual oneが手がかりとなる。太陽光線が多く入ってくるようになった場合に,地球規模・個人レベルのそれぞれでどのような悪影響があるかを下線部がより具体的に述べていると考えれば,上記2つの解釈のうち後者が正しいと判断できる。つまり,地球規模での悪影響はthrowing our environment into chaos ...であり,個人レベルでの悪影響はcausing deadly skin cancerなのである。
 内容面で考慮すべきことはもう1つある。それは,throwing our environment into chaos by ... causing deadly skin cancerはそもそもおかしなことを言っている点だ。
 いずれにしても,構造把握と内容理解は決して構造→内容の一方向だけで進むものではなく,相互にすりあわせながら進めていかなければならないことがよくわかる。
16:07:22 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

13 March

英文の本当の意味を理解する―英文読解の本質

 まずは以下の英文を見てほしい。

Just after finishing at Cambridge, Darwin encountered a strange opportunity: to serve as naturalist aboard the HMS Beagle. The rest, of course, is history. Though Darwin didn't conceive of natural selection aboard the Beagle, his study of wildlife around the world convinced him that evolution had taken place, and alerted him to some of its most suggestive properties. Two years after the end of the ship's five-year voyage, he saw how evolution works. Darwin's plans to enter the clergy would not survive this insight. As if to provide future biographers with ample symbolism, he had brought along on the voyage his favorite volume of verse, Paradise Lost. (Robert Wright (1994) The Moral Animal: Why We Are the Way We Are. Vintage Books., p. 22)

 下線部を直訳して解釈しても意味不明である。まずは2つの名詞中心表現をほどいて考えよう。Darwin's plans to enter the clergyはDarwin (had) planned to enter the clergyととらえればよい。上記の引用には含まれていないが,これより前の部分にDarwinが聖職者の道に進もうと考えていたことが書かれており,これとあわせて考えれば理解しやすい。this insightはinsightの基本的意味「理解すること」をふまえながら,thisが何を指しているかを考えることが大切だ。insightと前の文のsawとの関連に気がつけば(「理解する」という意味の共通性の他に,in+sightという語構成にも注目するとよい),this insight = saw how evolution worksであると判断できる。
 このうえで,surviveの意味を考えれば文全体の意味がわかる。ここでは簡単に,to live or exist longer than sb/sthというOALD7の定義を採用しておこう。ここまでに考えたことを総合すれば,「ダーウィンは聖職者の道に進もうと考えていたが,進化の働きがわかってそう思わなくなった」と理解することができる。
 このような読みかたを身につければ,英文の本当の意味が理解できる。ここで解説したのは単なる翻訳のテクニックではない。英文が表す概念に到達するための方法なのだ。
09:30:11 - yhatanaka - No comments - TrackBacks