院試塾ブログ
インターネット大学院予備校代表・畑中泰道のブログ

30 March

名詞中心表現の適切な読みほどき

 英語は名詞中心表現を好む,とよく言われる。たしかにそのとおりで,この名詞中心表現を適切にほどかなければ,日本語に訳すことは難しい。しかしこれは,単に「翻訳上のテクニック」ではない。そもそも,日本語と英語とではこの点に関する発想がかなり異なるため,訳出だけではなく理解のレベルでも,名詞中心表現をほどくことはきわめて大切であると思われる。
 以下の例を見てほしい。

... It used to be a commonplace that only humans recognised themselves in a mirror. But then it was shown that apes, elephants and dolphins can do, and more recently even little magpies with their birdbrains have proved they can, too. Even though we might think it's unlikely, it's hard to imagine a test to prove for certain that a snail cannot recognise its own reflection. Moreover, there is no reason to assume that an animal, especially one so fundamentally different, experiences consciousness in the same way that we do―so even a proven failure of the mirror test would not prove anything about snails. (John Farndon (2009) Do You Think You're Clever?: The Oxford and Cambridge Questions, p.97)

 下線部が名詞中心表現になっている。英語で言い換えるなら,it were proven that a snail fails to recognise its own reflection in the mirrorといったあたりになるだろう。これを英語では下線部のように,名詞に凝縮して表現するのである。その内容がわかった人が,英語での表現が上の引用になっているからという理由で,はたして「鏡のテストの証明された失敗」と訳して平気でいられるものだろうか。ぼくはそうは思わない。soのあとの部分は「たとえカタツムリが鏡のテストを通過しないと証明できたとしても,カタツムリについて何も証明したことにはならない」と言った表現ができないかぎり,その人は「わかっていない」のだ。単なる翻訳のテクニックの問題ではない。
 この違いは要するに,「命題をどのような形式で表現するか」についての傾向の違いなのだ。日本語は命題を文で表現するのが基本で,それに慣れている我々が,命題を名詞に凝縮して表現する傾向の強い英語を扱う際には,この傾向の違いを十分意識しておく必要があるのだ。
17:45:07 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

25 March

焦点化副詞の位置と解釈

 「焦点化副詞」とは英文法における副詞の分類の1つで,only/also/even/tooなどのように,文中の特定の要素を何らかの意味で「際立たせる」役割を果たす副詞,という理解で,とりあえず差し支えない。英文を読む際に問題となるのは,only/also/evenが文の中位(一般動詞の前,助動詞・be動詞[複数が連なる場合は最初のもの]の後)に置かれた場合,基本的にはそれ以降のどの要素にもかかりうる,という点だ。また,only/evenの場合はこれらの副詞よりも後の要素にしかかからないが,alsoの場合は,主語の名詞句にもかかりえる。
 これらの副詞は,もちろん修飾する語句の直前に置けばあいまいさの生じる余地は少なく,これを通例とする見かたもあるが,実際には文の中位に置くものが相当ある。たとえばonlyについて,『ルミナス英和辞典2』では,「《格式》ではonlyは修飾する語の直前に置き」としたうえで,以下のような説明を加えている。

話し言葉では(時に書きことばでも)動詞の後にくる語句を強調するときでも,onlyを動詞の前(または助動詞やbe動詞の後)に置く傾向がある。

  • Tom only saw the panda. トムはパンダしか見なかった。

  • Tom only saw [has only seen] pandas on television. トムはパンダをテレビでしか見ていない。



 それでは,実際に英語の文章を読んでいるときにはどう解釈すればよいのか。実はさほどあいまいで判断に迷うような場合は少ない。たいていは文脈の展開,言い換えれば情報構造から判断がつくのである。まずはonlyの例を紹介しよう。

Gradually, geologists learned to work out the history recorded in rocks. They used clues like these:

  • deeper is older―in layers of rock, the youngest rocks are usually on top of older ones

  • fossils are time markers―many species lived at particular times and later became extinct


But these clues only tell you which rocks are older than others. They don't tell you how old the rocks are. (GCSE Science: Foundation, p.61)

2つの下線部がonly tell youとdon't tell youとで対比されていることがわかれば,onlyの焦点が下線部であることは簡単に読みとれる。この展開で,onlyがtellにかかるという可能性は考えられないのである。
 今度はalsoの例を見てみよう。

In commonsense terms, it [=consciousness] just means being awake and aware. A snail, like most animals, is able to sleep and wake up. A snail is also, like any animals, aware enough of particular features in its environment to respond to them, choosing where it goes and how it reacts―even if it's only at its own particularly languid place. (Do You Think You're Clever?, p.96>

alsoの機能は新情報を既出の情報に関連させながら追加することである。この引用の場合,alsoを含む文とその前の文とでは,見てすぐわかるようにかなりの共通点がある。この共通点は新情報ではありえないから,残りの部分,すなわち補語の部分がalsoによって追加される新情報ということになる。
 このように考えればきわめて単純なのだが,実際には「カタツムリもまた…」と訳す間違いが実に多いのである。
21:49:32 - yhatanaka - No comments - TrackBacks