院試塾ブログ
インターネット大学院予備校代表・畑中泰道のブログ

16 October

いわゆる「学習英文法」のありようについて

 中学校英語検定教科書に関連する仕事を最近したこともあって,いわゆる「学習英文法」について考えることが多い。ぼくが感じる最大の疑問は,はたして本当に,文法を教えると英語嫌いが増えるのか,というものだ。また,もしそうであるとして,そのときに言う「文法」とはいったいどのようなものなのか,という疑問もある。
 個人的な見解ではあるが,学習英文法における「文法」では,以下の3つを区別する必要があるように思われる。

  1. 英語の文構造を司る体系としての文法。主に,主要4品詞(名詞,動詞,形容詞,副詞)と文の要素(主語,述語動詞,補語,目的語,修飾語)との対応関係と,その体系的拡張(to不定詞の基本3用法や節の機能)などを扱う。

  2. 上記の体系化のために必要な文法的概念・用語。

  3. 個々の文法現象や構文などにつけられた名称としての文法用語(たとえば,「連鎖関係代名詞」「接触節」「独立分詞構文」「繰り上げ構文」「tough構文」など)。


 結論から言えば,3.に属するものは,少なくとも用語として導入する必要はないと考える。もちろん,こういう用語を使えば,いちいち「…などが〜に用いられる構文」という説明をしなくてすむという利点はあるが,基本的には一種の「符牒」にすぎず,これらを導入することで英語嫌いが増えるというのがもし本当ならば,導入しなくてもいっこうにかまわないと思う。また実際,こういう用語をやたらに振りかざして,「こんなことも知らないのはダメだ」という「脅しの論理」を巧みに使う教師(残念ながら,予備校教師にはこういう輩がけっこういる)には,ぼく自身反感を覚える。
 しかし一方で,文法の概念や用語を使わないという方向に行きすぎて,1.や2.までも教育現場から排除してしまったのでは,英語の文構造を司る基本原則を学習しないまま,かえって記憶を偏重する結果になってしまうのではないか,と危惧する。むしろこの部分については,中学3年から高校1年くらいの,基本構造がひととおりで揃った段階で,整理もかねてひととおりの体系化をしておくことがむしろ望ましいのではないかと考える。
 いくつかの問題は,このレベルでもたしかに存在する。たとえば「不定詞とは何か」ということをきちんと説明できる人は,残念ながら中学・高校の英語教師でも少数派ではないだろうか。「to+動詞の原形」を「不定詞」と呼ぶ,というのは,便宜的な説明としてはありえても,きちんとしたものとは言いがたい。「分詞」も用語としては再検討の余地がある。「分詞構文」にいたっては,約束事としてあることがらを指してはいても,内容を的確に表す用語とは言いがたい。仮定法でも「仮定法過去」「仮定法過去完了」は適切として,「仮定法現在」や「仮定法未来」は問題がある。また,「仮定法」という用語・概念を導入する際に,「法」とは何かについて曲がりになりにでもきちんとふれる教師がどれだけいるだろう。
 また,中学・高校の時期というのは,抽象的な思考力を育てるべき時期でもある。その時期に「文法的思考のメソッド」をきちんと身につけさせることは,その後の言語との向き合いかたに大きな影響を及ぼすのではないか。そして何より,文構造の基本法則に従って文を作り出す力は,ある言語を実際に使ううえでも本当に必要な能力だと思う。
15:42:36 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

07 April

筑波大学英語学コース

 先ほどrespectivelyについて書いていて,学生時代のことをふと思い出した。
 ちょうど20年前の今ごろ,ぼくは筑波大学第一学群人文学類(現,人文・文化学群人文学類)言語学主専攻英語学コースを卒業した。日本で英語学を学ぶには最高の環境だと思う。音韻論,形態論(語形成),統語論,意味論をそれぞれ専門とする先生方から,英語学全般について体系的に学ぶことができる。現代の理論言語学には,大きな流れとして生成論と認知論の2つがあるが,それぞれの専門家がいる。英語を分析対象として体系的に学びたい学生には,これ以上の環境はないのではなかろうか。
 しかしながら,最近は人文学類で英語学コースに進む学生は少ないと聞く。1学年1人という場合もあるらしい。ぼくが学生の頃には,人文学類1学年120人のうち20人程度が進む最大のコースだったのだが。ややとっつきにくい感じがするのかもしれない。しかし,言語学的に英語を見るといろいろなことがわかるし,その方法論はずっと後になっても役立つものだ。
 母校への感謝の念も込めて,ここで宣伝しておこうと思う。
19:37:07 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

23 September

知識の問題は大きく二分できる

 学ぶとは知識を身につけることだ,と考えている人も多い。たしかに,知識を身につけることは必要な要素の1つではある。しかし,知識さえ身につければよいかというと,そうではない。
 知識にknowing that(宣言型の命題に還元できる知識)とknowing how(何かの方法を知っており,かつそれができること)とに分けられることはよく知られている。日本の教育ではknowing thatの部分が過剰に重視されているのが問題だという指摘がなされることがあるし,ぼく自身もそう考えている。英単語の意味を1対1対応で覚えるなどというのはその最たるものではないだろうか。
 今読んでいる,Atul Gawande (2010) The Checklist Manifesto: How to Get Things Rightに興味深い一節があるので紹介したい。

So as I looked up at this whole building that had to stand up straight even in an earthquake, puzzling over how the workers could be sure they were constructing it properly, I realized the question had two components. First, how could they be sure that they had the right knowledge in hand? Second, how could they be sure that they were applying this knowledge correctly? (p.53)

要するに,目的にかなう正しい知識を持っているだけでは不十分だ,ということだ。それを,目の前にある問題に正しく当てはめることができなければならないのである。knowing that / knowing howの区別とは若干異なるが,知識の問題を考えるうえで示唆に富む指摘である。
 英語の語彙や文法の知識はまさにそうである。知識がいくらあっても,それを使って目の前の英文が解釈できなければ意味がない。また,研究計画書などについても言えることではないか。研究計画書に何を書くべきか,どのように書くべきかの知識があっても,実際に書くとなるとうまくいかない人がいる。
22:25:37 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

16 November

高校生には高校生用電子辞書を

 高校生を教えていると,電子辞書がほんとうに普及していることが実感できる。早い時期から電子辞書を使うことに対する警戒感もあるが,ぼく自身は電子辞書肯定派で,高校生にもどんどん使ってほしいと考えている。そればかりでなく,電子辞書の使用を前提とした教育が必要ではないか,とさえ思う。
 各社とも高校生用電子辞書にはそれなりに力を入れていて,コンテンツも充実している。しかし,高校生が実際に使っている電子辞書は,一般向けのものがかなり多く見られる。高校生向けのものは高校での学習に特化したコンテンツが多く収録されているだけに,残念にも思う。
 個人的にはCASIOのものがいちばんよいと感じている。最新機種はXD-SF4850(※リンク先はamazon,以下同様)だ。英和辞典は『ジーニアス英和辞典』と『ベーシックジーニアス英和辞典』の両方を収録している。後者には語義の図解があり,基本的なイメージがつかめるようになっている。また,特に1年生の段階ではあまり多くの語義・訳語に惑わされないほうがよいが,学年が上がるにつれて多くの情報が必要になることを考えると,両方を収録してあることにはそれなりに意味がある。SHARPの高校生モデルPW-GC590もこの2つの英和辞典を搭載している。
 和英辞典はどうか。XD-SF4850は『プログレッシブ和英辞典』を収録している。学習用和英辞典として,ぼく自身も信頼しているものだ。PW-GC590のほうは『ジーニアス和英辞典』で,けっして悪い辞書ではないが,訳例が適切かつ豊富な点で,プログレッシブに軍配が上がると考えている。
 英英辞典はCASIOがLongman Dictionary of Contemporary English,SHARPがOxford Advanced Learner's Dictionaryとなっているが,この2つを比べてもLongmanのもののほうが優れていると感じている。また,CASIOは表現用のLongman Language Activatorも入れている。
 他の収録コンテンツにもついてもいろいろ違いはあるが,高校生用電子辞書の最大の特徴は,各教科に対応した学習用コンテンツが豊富に収録されていることだ。特に,山川出版社の用語集は,地歴公民の学習には必要不可欠なものだが,CASIOのものにはすべて収録されている。
 各社ともリスニングコンテンツにも力を入れており,電車やバスで通学しているときに学習できるようになっている。
 高校生には,ぜひ高校生用電子辞書を。
09:34:36 - yhatanaka - No comments - TrackBacks

08 December

好きなら自然に覚えたものがあるはず

 今日の『徹子の部屋』(テレビ朝日)で,出演者の笑福亭仁鶴さんが弟子入り希望者について語っていて,何か知っている落語を少しやってみてと言っても知らないと答える,という話をしていた。その時に仁鶴さんは,好きなら自然に覚えたものがあるはず,という趣旨の発言をしていたが,まったくそのとおりだと思った。本当にあることが好きで興味があるなら,弟子入り前にもある程度のことをしていてしかるべきなのだ。これは大学院入試,さらには大学入試についても言えることではないか。ただ教わろうとするのではなく自分から学ぶ,という姿勢が足りない人が多い。それでは本当に興味があるとは言えない。興味があることは今すぐに何かしたいことのはずだ。
17:08:48 - yhatanaka - No comments - TrackBacks