英語では「言い換え」が多用されるが,読解の場面で積極的に活用すればずいぶん有益となる。例を挙げて検討していくことにしよう。
… computers are serial, doing one thing at a time; brains are parallel, doing millions of things at once. Computers are fast; brains are slow. Computer parts are reliable; brain parts are noisy. (Steven Pinker (1997) How the Mind Works. Penguin. p. 26. underline added)
下線部に注目してほしい。ここのserial / parallelをどう解釈するか。結論から言えば,serialは「順次処理の」,parallelは「並列処理の」となる。コンピュータ科学などで用いられる専門用語である。しかし,この用語をどう訳すかはさほど問題ではないだろう。イメージとして的確にとらえられるかどうかのほうが問題だ。
ここでカギとなるのが,それぞれの言い換えである。serialをdoing one thing at a time,parallelをdoing millions of things at onceと,それぞれ言い換えている。つまりserialとは「1度に1つのことをする」,parallelとは「1度にたくさんのことをする」という意味でここでは用いられている。
まずはserialから図解で考えてみよう。
→が処理の流れ,記号は1つずつの処理を表している。serialの場合は処理の流れが1つだけで,その流れのなかで1つずつの処理がおこなわれる。あわせて確認しておくとよいのが,serialはseriesの形容詞形である点だ。
続いてここでのparallelの意味を図解すると,以下のようになるだろう。
大切なのは,→で表される処理の流れが複数あり,それが縦に平行に,つまりparallelに並んでいる点だ。実は,これがparallelという語がここで問題になっている意味で用いられている理由なのだ。このように図解することで,根源的な意味と拡張された意味とのつながりも見てとることができる。
本題からはズレるが,もう1つnoisyという語にも注目してみたい。引用では対比が流れの基本になっているから,noisyの意味もreliableとの対比で考えてみるとよい。辞書でnoisyという形容詞を引いてもあまりピンと来ないが,名詞noiseを見ると,たとえば『リーダーズ英和辞典』には「【電算】ノイズ, 雑音《回線の乱れによって生ずるデータの誤り》」という意味が挙がっている。ここで注目したいのは「データの誤り」である。これはreliableの意味と明確に対比される。以上から,このnoisyは「誤りが多い」と考えればよいことがわかる。
つねづね書いているが,機械的な作業だけでは英文の意味は読みとれない。今回書いたような形で,自分の頭で考えながら読み進めていくことが大切なのだ。