in the first placeという表現には大きく2つの意味がある。「第一に」と「そもそも」である。
LDOCEを見ると,第1の語義の例として
In the first place, I'm too busy, and in the second I don't really want to go.が,第2の語義の例としてI wish I'd never got involved
in the first place!が,それぞれ挙がっている。前者はin the second (place)との対比にも注目しておくのがよいだろう。「そもそも」という語義の例として,
Macmillan English DictionaryにはIf you don't like her, why invite her
in the first place?というのが挙がっているが,この用例のように,疑問文で用いられる場合も多い。
ここで考えたいのは,なぜ「第一に」という意味の表現が「そもそも」という意味でも用いられるのか,だ。
COBUILDを見ると,「そもそも」に相当する語義はYou say
in the first place when you are talking about the beginning of a situation or about the situation as it was before a series of events.となっている。つまり,「ことのはじまり」に焦点を当てるときにこの表現を使う,ということだ。
日本語でこの「そもそも」という語がどういう意味を持つかも検討してみよう。『新明解』を見ると,1番目に「問題となる事柄を論じるのに先立って,その根源にさかのぼってことを説き起こす様子」,2番目に「以下に述べることが,話題の中心となる事柄を理解してもらう上で前提となることである意を表す」となっている。1番目が副詞,2番目が接続詞という違いからも語義が分けられているように思われるが,どちらも英語のin the first placeに対応すると考えてよいだろう。
それでは,この問題を図解を用いて考えてみることにする。「第一に」の意味はおおむね以下のように図解できる。
順序だって述べられたことの1番目のものに焦点を当てている,という意味だ。
これに対して,「そもそも」という意味は以下のように図示できるだろう。
この図でいちばん重要なのが赤い矢印だ。現在の状況から最初のところまで話を引き戻す,という意味を表している。
語句の意味は常に比喩的に拡張される可能性を持っている。今回とりあげたin the first placeについても,「第一に」からの拡張の結果,「そもそも」という意味を持つようになったと考えてよいだろう。この拡張の過程がきわめて自然なものであるのが,2つの図解を比較すれば明確にとらえられる。