院試塾ブログ
インターネット大学院予備校代表・畑中泰道のブログ

because節の「係りかた」

 中級の英語学習者が注意すべきことがらの1つとして,because節の解釈がある。まずは以下の例を見てほしい。

この文は以下の2とおりの解釈が可能である(訳文も『英文法総覧』のもの)。

  1. 私は彼が金持ちだから尊敬していない。

  2. 私は彼を尊敬しているが,それは彼が金持ちであるという理由によるのではない。


英文法の研究では「否定の作用域」の問題としてとりあげられることが多い。訳文からもわかるとおり,1の解釈では否定語notの対象範囲にbecause節は含まれていないが,2の解釈ではこの範囲にbecause節が含まれる,という違いがある,と説明される。少しわかりにくいかもしれないが,単純化して言うと構造が以下のように違うのである。

  1. [I don't respect him] [because he is rich].

  2. [I don't [respect him because he is rich]].


上の構造の違いを日本語と対応させて考えるならば,以下のようになる。

  1. [私が彼を尊敬していないのは],[彼が金持ちであるからだ]。

  2. [[私は彼が金持ちだから尊敬している]のではない]。


つまり,1のbecause節は主節全体を修飾しているのに対して,2のbecause節は動詞句を修飾している,と考えればよいのである。ついでながら,この構造の違いから予測されるとおり,because節を主節の前に置くと,1の解釈しかできなくなる。分裂文(いわゆる強調構文)にしても同じである。
 上記の違いは通常,否定との関連で説明される。多くの場合注意を要するのは否定語との組み合わせであるから,基本的にはこれで問題ない。しかし,以下のような例もあるので,not ... because 〜を「〜だからといって…というわけではない」と慣用表現のように覚えるのは,あまり感心しない。

During the 1950s and 1960s, the General Education curriculum was modified, generalized, and opened up to departmental substitutions. As a result, it eventually lost much of its intellectual integrity. It may have fallen apart because prosperity swept over America, and a generation of students arrived in Cambridge unconscious of threats to civilization that had inspired their predecessors. But it disintegrated also in part because it was almost impossible to teach. (Harry R. Lewis, Excellence without a Soul: Does Liberal Education Have a Future?, p.56)

下線部のmayは形式上have fallen apartと組み合わせになっているが,このmayの可能性の意味が具体的に係っているのはbecause節のほうで,「一般教育のカリキュラムが崩壊したのは,アメリカ全体が繁栄したからというのもあるだろう」と解釈するのが正しい。以下のような日本語で考えてもよい。

これは上記のnot ... because 〜と同様の問題を含んでいるわけである。
 文脈にも,この解釈を強く示す証拠がある。その1つは,前後のit eventually lost much of its intellectual integrityやit disintegratedから考えて,カリキュラムの崩壊そのものは可能性に問題ではなく事実として示されている点だ。この流れで考えると,下線部だけ可能性のmayがhave fallen apartと意味的に結びついていると考える根拠はきわめて希薄であろう。そしてもう1つは,直後の文のalso in part because ...を見てもわかるとおり,下線部で提示されている理由はそれだけですべてではなく,複数あると考えられる理由の1つである。mayが頻度・確率の意味を表していて,意味上はbecause節に係っていると考えれば,これもうまく説明がつくのである。

posted at 18:43:29 on 09/02/12 by yhatanaka - Category: 英語

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